ローカル鉄道の時間旅行
杉森涼
  TOP > 東京〜北海道・各駅 > 比羅夫駅から羊蹄山へ

東京〜北海道 各駅停車
(3日目)
比羅夫駅から羊蹄山に登る


 鉄道ファンなら誰もが知る、函館本線の山線のシンボルである羊蹄山(標高1898m)へ、比羅夫駅から登る。今回の旅行の最大の目的だ。
 日本百名山に数えられる羊蹄山は、独立峰の活火山で蝦夷富士とも呼ばれている。
 正式には後方羊蹄山(しりべしやま)と言い、深田久弥の日本百名山にはそのように記されている。

羊蹄山
倶知安駅から見た羊蹄山

倶知安から比羅夫へ

 2018年10月15日。
 明け方、目が覚めてカーテンを開けると、霧が濃いが羊蹄山のシルエットは見えている。道路が濡れているので雨が降ったようだ。
 昨日の天気予報では晴れると言っていたので、霧が晴れるのを祈るしかない。
 ホテルを出て倶知安駅に着くと少し晴れてきたが、羊蹄山の山頂には笠雲がかかっている。
 登山のリュック以外の荷物はコインロッカーに入れていく。登山の後に札幌まで行く予定である。
 私が乗るのは6時24分発の長万部行き。キハ150の1両編成で乗客は2人だけである。ホームの向かいには札幌方面苫小牧行きのディーゼルカーが停車していて、小樽や札幌への通勤客がちらほら乗っている。
 倶知安を発車すると、ゆっくり走り7分かけて比羅夫に着いた。ホームに下りると霧が濃く視界が悪い。

比羅夫駅
比羅夫駅

 ロッジのような駅舎は民宿になっていて、薪が山積みになっている。宿泊客はいないようだ。
 運行本数は2〜3時間に1本程度しかなく、登山後は絶対に18時04分発の小樽行きに乗らなければならない。

比羅夫駅から羊蹄山へ

 比羅夫駅を後にして急坂を登っていく。比羅夫駅は谷底にあり、国道5号線に出るまでに20分もかかった。倶知安駅からここまでバスもあるが、2時間後だから歩くより仕方がない。
 国道5号線の「羊蹄山登山口→」の看板にしたがい、正面に羊蹄山を見ながら歩いて行く。青空が覗いているが、依然として山頂には笠雲がかかっている。

羊蹄山の登山口へ歩く
羊蹄山の登山口へ歩く

 野菜畑を見ながら歩いて半月湖への道が分かれると、7時25分に駐車場がある登山口に着いた。登山口の標高は350mなので、標高差1500m以上を登ることになる。
 今日は10月15日なので、冬に備えてトイレはすでに閉鎖されている。携帯トイレが必須だ。
 道標には頂上まで4時間40分、頂上のお鉢まわりが50分と記されている。

羊蹄山の登山口
登山口

 羊蹄山の周辺にもヒグマが生息しているらしいので、念のため鈴を鳴らしながら歩いて行く。
 登山口まで誰にも会わなかったが、登り始めると車の音が聞こえて、後から登ってくる人がいるようで安心する。
 紅葉の森をしばらく登っていくと風穴があり、登山口から40分ほどで二合目に着いた。
 スキー場になっているニセコアンヌプリが見え、ちょっとした雲海になっていて眺めがよい。斜面にはスキーのリフトが何本かあり、山麓にはホテルらしき建物がひしめき合っている。

羊蹄山登山道から見たニセコアンヌプリ
ニセコアンヌプリ

 少し休んでいると、私よりは若い女性が一人で登ってきた。地元の人かと思ったが、話を聞くと茨城県からだという。倶知安の友達の家に泊まって、登山口まで車で送ってもらったそうである。
 先を譲って、ゆっくり登っていく。二合目、三合目と表示があるので目安になる。富士山と同じように、徐々に森から灌木になって、見晴らしがよくなってくる。
 先ほどの女性が休憩しているところを今度は私が追い越していく。八合目あたりで休憩していると三度、女性が抜いて行き、それ以後は会うことがなかった。
 傾斜が増して九合目に着くと、山頂へと避難小屋への道に分かれる。この辺りは、夏はお花畑になるらしい。

羊蹄山・九合目
九合目

 右に火口を見ながら外輪を山頂へ向かうと霧が出はじめ、雨も降り出してきたので雨具を着込む。
 登山口から4時間半、正午前に標高1898mの山頂に着いたが、岩場に「羊蹄山山頂」の標柱が立っているだけで、霧で何も見えない。岩陰には雪がある。
 時折、風が吹くと霧が切れて火口が見える。雨が強くなってきたので、身を隠せる岩場でしばらく休憩して、避難小屋へ向かう。

羊蹄山・山頂
羊蹄山・山頂

 羊蹄山には喜茂別や真狩などからのルートがあるので、標識を確認しながら進む。途中で道を間違えたようなので引き返したりする。雨からみぞれに変わって寒くなってきた。
 飲み物がなくなってきたので、避難小屋に売ってないかなぁと淡い期待を抱いたが、今年の営業はすでに終わっていた。1階のドアには冬季に備えて板が打ち付けてある。
 高所恐怖症の人には登れないようなハシゴを登って2階のドアから小屋に入ると、もちろん誰もいない。逆に、誰かいたら不気味だ。
 小屋内の雑魚寝できる部屋にはストーブが置かれ、バケツに石炭が盛ってある。神棚には日本酒の一升瓶が供えてある。
 コインを入れてトイレを借りる。

羊蹄山避難小屋
羊蹄山避難小屋

 避難小屋から九合目の分岐に戻り、登ってきた道を下っていくと、雲から出て展望がよくなってきた。畑が広がる田園には虹が架かっている。
 登山口には16時すぎに戻ってきた。車道を歩いて振り返ると、七合目から上は雲の中だが、夕日に照らさて羊蹄山が黄金色に輝いていた。

夕日を浴びる羊蹄山
羊蹄山を振り返る

比羅夫から小樽、札幌へ

 17時頃、駅舎に明かりが灯っている比羅夫駅に着いた。飲み物が尽きて喉がカラカラだが、店どころか自販機すらなく倶知安まで我慢しなくてはならない。
 1時間ほど待つと、18時04分発の小樽行きがやってきた。

夕暮れの比羅夫駅
比羅夫駅

 8分で倶知安駅に着くと20分ほどの停車時間がある。その間にコインロッカーから荷物を取り出し、スポーツドリンクを一気に飲み干して水分補給、口直しの水も買った。
 倶知安から1時間20分乗り、小樽で快速エアポートに乗り継ぐと、札幌には20時40分に着いた。地下鉄に乗って、いつも泊っているホテルへ向かう。
 明日は筋肉痛の予感だが、支笏湖の眺めがよさそうな標高866mの紋別岳へ登ることにしている。
 明日もこのホテルに泊まるので、溜まっている洗濯は明日にしよう。
(つづく)


 東京〜北海道 各駅停車10日間
 【1日目】東京から奥羽本線で青森へ
 【2日目】函館から倶知安へ
 【3日目】比羅夫駅から羊蹄山に登る
 【4日目】千歳駅から支笏湖、紋別岳へ
 【5日目】小樽の手宮線跡と旭展望台
 【6日目】留萌本線の恵比島駅と廃線跡