東の果て納沙布岬へ今回の旅の一番の目的地は、国後島や歯舞諸島などの北方領土を望む、日本で最も日の出が早い根室の納沙布岬。釧路からJR花咲線に乗って根室へ、バスに乗り継いで納沙布岬を目指す。 因みに納沙布岬は、日本最東端ではなく本土最東端である。 釧路発、根室行き「快速はなさき」2016年11月8日。今日は北海道フリーパスを使い始めて2日目である。 5時20分に釧路駅に着くと、道東の日の出は早いが、まだ真っ暗である。もちろん売店は閉まっていて駅弁は買えないので、コンビニの軽食で我慢する。 寒いので温かい缶コーヒーを買い、ホームへの階段を上がると、根室行きの列車はすでに1両で入線、エンジンを震わせている。 釧路から根室までは近いようなイメージだが、実際には135kmもあり、列車で2時間半もかかるので、5時35分の始発「快速はなさき」に乗る。眠いが次の列車が3時間後では仕方がない。 平日の早朝なので乗客は10人くらいだ。シートには丹頂鶴や灯台が描かれて、いかにも北海道らしい。 釧路駅で発車を待つ快速はなさき 釧路から根室へ釧路を出発し、隣駅の東釧路で網走へ向かう釧網本線と分かれる。市街地が尽きて別保をすぎると丘陵地帯の樹林がしばらく続く。やがて樹林を抜けると牧草地に変わって尾幌を通過、夜が白々と明けてきた。 門静をすぎて太平洋に出ると、右窓にアイカップ岬の断崖と大黒島が見える。 東釧路からノンストップで44kmを走行し、厚岸に6時20分に到着。それにしても北海道の列車は暖房が効きすぎていて暑いほどだ。 厚岸は上りと下りが交換できる駅で、向いのホームには2両編成の釧路行きが停車していて、高校生が10人ほど乗っている。釧路市街まで通っていて、部活の朝練でもあるのだろう。 厚岸駅・釧路行きの列車 厚岸(アッケシ)とはアイヌ語で「カキのいるところ」を意味し、もちろん牡蠣が名産だ。牡蠣の殻が堆積してできたという鳥居が立つ島があり、道の駅などでは牡蠣のグルメが堪能できる。名産の生ガキを食べたいと思うが下車する訳にはいかない。 厚岸でほとんどの乗客が下車して車内はガラ空きになったが、この先はこれぞ北海道と言える車窓である。 別寒辺牛湿原の絶景汽水湖である厚岸湖の北へ回りこむと、別寒辺牛湿原の絶景が広がっており、ヨシが茂る川沿いを列車は進む。外からも見てみたい衝動に駆られて、後年にこの周辺を歩いて散策することなった。別寒辺牛湿原はラムサール条約の登録湿地に指定されていて、川は岸壁工事などが施されておらず、太古のままの風景だ。 別寒辺牛湿原の車窓 厚岸から25分ほどで霧多布への玄関口である浜中に着くと、ホームにルパン三世が立っている。 浜中は原作者モンキーパンチ氏の故郷だという。この路線には、ルパン三世の登場人物がラッピングされた車両も走っている。花の湿原とも呼ばれる霧多布にも一度行ってみたい。 かつて標津線(廃線)が発着していた厚床(あっとこ)に7時10分着。かわいらしい名前の駅だが、初めて来た人には厚床と厚岸は紛らわしい。 この列車は快速だが、ここから根室までの7駅はすべて停車して、各駅で通学の高校生を拾っていく。 別当賀をすぎると灌木から草原に変わる。丘陵をカーブしながら緩やかにアップダウンして、花咲線で屈指の車窓だと思う。 再び海が見えて落石に7時38分到着。高校生がたくさん乗り込んできた。 後日の旅での落石駅 馬が生息する無人島のユルリ島走り出すと樹間に太平洋に浮ぶ無人のユルリ島とモユルリ島が見え隠れする。真っ平な異様な形をしている。ユルリ島はアイヌ語で「鵜が居る島」だが、野生の馬がいるという。モユルリ島のモは小さいという意味である。落石の次が昆布盛という駅で、この辺りは沖合いでの昆布漁が盛んなのだが、かつての船にはモーターが付いていなかった。獲れた昆布は水分を含んで重く、本土まで運ぶ労力や手間がかかるので、ユルリ島に運び上げて干していたそうだ。 その際の労力として馬が必要だったのだが、モーター付きの船が普及すると、馬たちはユルリ島に置き去りにされたという。一時は子孫が繁栄してたくさんの馬がいたそうだが、現在はかなり少ないなったらしい。 後日の旅でのユルリ島とモユルリ島 昆布盛をすぎると、ようやく細長い根室半島に踏み入れる。牧場の中を走り、大きな道産子馬がたくさん見える。牧草地が多いのは海霧で作物が育たないのが理由らしい。 日本最東端駅である東根室に7時58分着。 鹿児島の西大山はシルエットの美しい開聞岳が見え、日本最南端駅に相応しいが、東根室は住宅地でイメージとは違う。40〜50人の高校生が全員下車、通学のための駅のようだ。 終点の根室には8時すぎに到着。 終点の根室駅に到着 根室駅からバスで納沙布岬へ納沙布岬行きのバス乗場へ向かう。バスは8時20分発、15分ほど時間があるので近くを散策。駅前はとても広いがガランとしている。バスには往復割引乗車券があるが、帰りは少し歩いてみたいので普通に運賃で払うことにした。 市街地をすぎると笹の草原につくられたような道がずっと続き、納沙布岬には9時5分に到着。 本土最東端の納沙布岬雲っていたが視界はまずまずで、歯舞諸島が見える。納沙布岬は霧が出やすいと言うので、運がよい方かも知れない。まずは北方領土の歴史が学べる北方館、火が焚かれている四島のかけ橋などを見学する。 納沙布岬の標柱と灯台 明治5年に北海道で最初にできた灯台の裏に小屋が建っており、風が強いので避難すると野鳥の写真などが展示してある。「のさっぷ岬マップ」が貼ってあったので、これを参考にいろいろと見て回ることにした。 地図と合わせて見ると、納沙布灯台の左が秋勇留島、さらに左へ順に萌茂尻島、勇留島、灯台が立つ貝殻島、水晶島と分かる。とにかく、平坦な島ばかりである。 遠くには、国後島の爺爺(ちゃちゃ)岳、羅臼山も薄っすらと見えた。 納沙布岬から貝殻島まではたったの3.7km、水晶島までは7kmにすぎない。水晶島にはロシア警備隊の監視所やレーダーも見える。 平らな秋勇留島(左)と納沙布岬灯台 貝殻島では昆布漁が許される時期があり、その様子を写したフォトコンテストの作品が展示してあった。 朝食は軽く済ませたので、お腹が空いてきた。レストハウスがあり、せっかくなので貝殻島で獲れたという「貝殻昆布」の入ったラーメンを注文。 帰りのバスの時間まで1時間以上あるので、バス通りを行けるところまで歩いて、最東端を満喫することにする。 (つづく) |
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