ローカル鉄道の時間旅行
杉森涼
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水郡線・奥久慈清流ラインの車窓


 去年の夏は北海道&東日本パスを利用して東京を起点に5日間の日帰り旅をした。最も遠くまで行ったのが長野県の姨捨であった。東京から鈍行列車で日帰りとなると、せいぜいこれくらいの距離までだろう。
 今回は水戸からの水郡線または、いわきからの磐越東線で清流の車窓を眺めようと思う。どちらも常磐線から分かれる線で終点が福島の郡山である。
 時刻表をあたってみると磐越東線はちょっと厳しいことが分かった。行けないこともないが、翌日の仕事に支障がありそうなので、乗り継ぎのよい水郡線に乗ることに決めた。
 水郡線は奥久慈清流ラインと呼ばれ、沿線には袋田の滝などの名所があり、涼しいイメージでこの時期にぴったりだ。
 今年も北海道&東日本パスを利用して3〜4日ほど日帰り旅に出る。

水郡線の久慈川の車窓
久慈川の車窓

品川から水戸へ

 2026年7月8日 水曜日
 最寄りの大船から5時43分の横須賀線に乗って、まずは品川に向かう。
 水郡線の起点の水戸までは167km、3時間もかかるので、Suicaグリーン券(1550円)を買う。101km以上の場合、どれだけ乗っても1550円は変わらない。
 東海道線のグリーン車は、この時間帯でも混んでいて座れるか分からないが、横須賀線の方は空いている。
 45分ほどで品川に着き、常磐線に乗り換える。品川始発6時35分の勝田行きもグリーン車は空いていた。水戸以遠の長距離の客は10分後に出る「特急ひたち」に乗るのだろう。勝田は水戸の一つ先の駅である。

品川・常磐線
品川

 東京都から千葉県に入って松戸、柏、安孫子とすぎると、男体山と女体山から成る筑波山が見えてきた。天気はまずまずである。
 天王台を出て利根川を渡り、千葉県から茨城県に入ると取手に着く。左窓には関東鉄道常総線のディーゼルカーが発車を待っている。
 土浦で15両編成のうち5両を切り離すのでしばらく停車する。それを象徴するかのように、ホームが下車した通勤・通学客で一杯になった。
 この電車では水戸に早く着きすぎるので、2〜3本後のに乗りたかったのだが、それらの電車は土浦でグリーン車も切り離されてしまうので、これに乗ることにしたのであった。
 取手から土浦までは田んぼが多かったが、土浦をすぎると蓮田が多くなってくる。霞ヶ浦はレンコンの産地である。淡いピンクや白色の花がちらほら咲いている。
 左前方に見えていた筑波山が左後方に遠ざかり、8時45分に水戸に着いた。

水戸駅
水戸駅

水戸から常陸大子へ

 水郡線は水戸から郡山の一つ手前の安積永盛まで137.5kmの長い路線で、途中の上菅谷から常陸太田への支線が分かれている。
 郡山行きは9時23分発でだいぶ時間があるので、9時08分発の常陸太田行きで上菅谷まで行こうと思う。
 駅前をしばらく散策してから水郡線のホームに下りると、常陸太田行きの2両編成と郡山行きの4両編成がすでに入線していた。
 私は水郡線に初めて乗るので楽しみだ。車両はキハE130系気動車で、これもたぶん初めだと思う。ボックスシートもあるので車窓を見るのにはよい。

水戸・水郡線キハE130系
水戸・水郡線

 水戸を出て那珂川を渡ると田園風景に変わる。下菅谷、中菅谷をすぎると9時26分に上菅谷に着き、ここで15分後の郡山行きに乗り換える。
 構内踏切を渡って駅前に出てみたが、とくに何もないのでホームのベンチで列車を待つ。駅名標には那珂市曲がり屋と白鳥が描かれている。
 白鳥が飛来する湖があるらしいので、冬にはこれと凍った袋田の滝を見に行くのもよさそうだ。
 4両編成の郡山行きはガラ空きで、車窓を楽しめるボックスシートに悠々と座ることができた。

上菅谷・水郡線キハE130系
上菅谷

 上菅谷から16分で主要駅の常陸大宮に着く。埼玉の大宮との重複を避けるために常陸を冠しているという。
 江戸時代には水戸と奥州を結ぶ街道と久慈川の舟運で賑わった宿場町というが、車内から見る限りはひっそりとしていて街並みも古い。
 常陸大宮を出ると一段と鄙びた風景に変わり、宿場町の雰囲気が残っている山方宿をすぎ、中舟生の辺りで久慈川の右岸に出て列車は北上していく。
 久慈川は福島県と茨城県の県境にある八溝山を水源とし、大子町、常陸大宮市などを経て日立市で太平洋に注ぐ一級河川である。
 下小川をすぎると初めて久慈川に架かる鉄橋を渡る。ここから常陸大子まで、右へ左へ大きく蛇行している久慈川を何度も鉄橋で渡っていく。川には鮎釣りをしている人がいる。

水郡線の久慈川の車窓
久慈川の車窓

 清流の車窓を満喫すると袋田に着く。駅前には列車の到着に合わせて袋田の滝へのバスが寂しくポツンと待機しているが、一人も下車しなかった。水郡線は本数が少ないので、みんな車で行くのだろう。
 久慈川の6つ目の鉄橋を渡り、支流の押川を渡ると10時42分に常陸大子に着いた。3両が切り離されて先頭車両のみが郡山まで行くようだ。

常陸大子から安積永盛へ

 発車は11時06分なので駅前に出てみる。常陸大子は水郡線で最も大きな駅だが、人も疎らで活気もない。天気もどんよりしていて食堂も閉まっている。
 時刻表には、奥久慈しゃも弁当という駅弁が載っているが、そんなものを売っている気配もない。

常陸大子駅
常陸大子駅

 とりあえず本町通りの郵便局へ風景印をもらいに行くと、予想通り、袋田の滝のデザインであった。
 常陸大子の街や袋田の滝を散策したい気持ちもあるのだが、次の列車が3時間半後なのでどうしようもない。
 駅前に静態保存されている蒸気機関車を見たりしてからホームに戻ると、一両編成のボックスシートはすでに埋まっていたので、窓に背を向けるロングシートに座る。24分もの停車中に何もせず、ずっと座ってなどいられないので、これも想定内だ。
 茨城県から福島県に入り、紅葉の名所の矢祭山の渓谷をすぎると田園風景が広がってくる。どんよりしていた空の雲が切れ、青空に水田の緑が映えて眩しい。

水郡線の車窓
車窓

 やがて久慈川が離れていくと、磐城棚倉、磐城石川などで地元の人たちが乗り降りするようになる。
 磐城棚倉から新白河までは路線バスが40分で結んでいる。山を越えていく路線バスに乗るものよさそうだ。
 田園風景も見飽きて40〜50分をウトウトしながら過ごし、最後に阿武隈川を渡ると12時47分、東北本線の安積永盛に着いた。
 終点の郡山まで行ってしまうと、12時55分発の上り電車に間に合わないので、ここで乗り換えることにする。

安積永盛駅
安積永盛駅

安積永盛から宇都宮へ

 安積永盛の上りホームは期末試験の帰りらしい高校生で溢れている。郡山からやってきた新白河行きの電車は短い2両編成で、しばらく立たされたが、ここまでずっと座っていたのでこれもよい。
 須賀川、矢吹などひと駅ごとに高校生たちが下車、35分で新幹線の停車駅である新白河に着く。ここで25分の乗り継ぎ時間がある。高原口と名づけられた出口に惹かれたが、外に出ると生温かい風が吹いていた。
 東北新幹線に乗って一気に東京へ帰りたくなるが、北海道&東日本パスで来ているので13時55分発の黒磯行きに乗る。同じホームに郡山行きと黒磯行きが停まっているので間違えそうになった。

新白河
新白河

 黒磯行きはほとんど乗客がいないのに、なぜか長い5両編成で快適だ。新白河から黒磯での見どころは、大正9年に架橋された土木遺産の黒川橋梁である。
 昭和60年頃、東北本線の急行で福島へ行ったときに、すごく高い鉄橋を渡った記憶があり、ここではなかったかと思う。白坂をすぎて神経を集中し、鉄橋からの車窓を撮った。

黒川橋梁からの車窓
黒川橋梁からの車窓

 朝、水戸を出て渡った那珂川を再び渡ると黒磯で、跨線橋を渡って宇都宮行きに乗り継ぐ。涼しいイメージの黒磯もモヤモヤしていて涼しくない。
 15時15分に宇都宮に着くと、18分後に出る湘南新宿ラインの電車は快速で嬉しい。快速でも大船までは2時間40分もかかるので、またSuicaグリーン券を買った。

宇都宮
宇都宮

 (つづく)


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 水郡線・奥久慈清流ラインの車窓