ローカル鉄道の時間旅行
杉森涼
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苫小牧から道南を一周


急行はまなすに乗って札幌へ

 昨日は丸一日かけて苫小牧から襟裳岬を往復した。今晩は函館に宿泊予約をしているので、苫小牧から札幌、小樽へ行き、日本海側をぐるっと周ってみよう思う。
 2016年に北海道新幹線が開業して北斗星が廃止されると、「急行はまなす」も廃止されるのは確実だから、まずはこれに乗っておくことにする。
 はまなすには20年以上前に一度だけ、札幌から青森まで乗ったことがあるので懐かしい。当時は札幌〜函館の夜行列車「快速ミッドナイト」というのも走っていた。
 そのときは寝台車ではなく指定席に乗ったと思うが、今回は北海道全線フリーきっぷで乗れる自由席である。

早朝の苫小牧駅
苫小牧

 2014年11月12日。
 真っ暗の中、4時50分に駅に着くとホームには数人がちらほらしている。はまなすの苫小牧発は5時1分で、自由席がある先頭車両の位置で待つ。11月も半ばになり、関東の人間には寒さが染みる。
 はまなすがやってきて、先頭の自由席に乗り込むと10人ほどと乗客は少なく、みんな眠っていて静かだ。南千歳をすぎた頃だったか、外が薄明るくなると「おはようございます・・・」の車内放送が入り、6時7分に札幌に着いた。
 はまなすのヘッドマークをつけた先頭の機関車の写真を撮って、6時13分発の小樽行きに乗ると混んでいて席はすべて埋まっている。

急行はまなす
急行はまなす

途中下車しながら小樽へ

 小樽から8時7分発の長万部行きに乗るので、この列車では1時間も早く着いてしまう。小樽は何度か観光したことがあるので、銭函と朝里で途中下車することにしようと思う。
 手稲山にスキーに来たことなどを思い出したりして、陸地から海に出ると6時42分に銭函に着いた。銭函で降りようと思ったのは、ニシン漁で栄えたころの象徴の銭函を見たかったからだが、大きなのが一つ置いてあるだけで、ホームの天井から吊るされている光景はなかった。
 30分ほど駅前を散策したり海を見に行ったりして過ごし、7時18分発の列車に乗ると石狩湾の海沿いを走り、とても眺めがよいので、座ってじっくりと眺めたい。8分ほどで朝里に着き、再び途中下車する。

石狩湾
石狩湾

 朝里の駅舎は白壁で出窓などがあり、洋風建築の一軒家といった感じであった。海に出ると対岸に高島岬など小樽の山並みが見える。ここから山へ5kmほど上っていくと朝里川温泉があるらしい。
 10分ほどで駅に戻り、7時40分発の列車に乗ると、小樽に7時50分に着いた。向かいのホームに停車中の長万部行きに乗り込むと、空いていて窓側に座ることができたのだが、発車直前に札幌からの列車が着くと満員になった。一両だから仕方がない。

小樽駅で長万部行きに乗り換え
小樽

小樽から倶知安、岩内へ

 8時7分に小樽を出て15分ほど走ると塩谷という駅に着く。ここから標高629mの塩谷丸山への手軽なハイキングコースがあり、いつか登ってみたいと思う。
 余市で乗客の半数くらいが下車すると、海から離れて山へ分け入っていく。山線と呼ばれるこの函館本線の象徴が羊蹄山である。
 朝が早かったので、睡魔に襲われてウトウトしているうちに然別、銀山、小沢とすぎて9時20分に倶知安に着いた。このまま乗っていれば11時すぎに長万部に着くのだが、ここから日本海側をバスでのんびり揺られてみようと思う。

倶知安に着いた列車
倶知安

 倶知安駅のホームからは雲がかかっているが羊蹄山が見え、山頂から続く谷には雪が積もっている。  駅名標は上段に「くっちゃん」、下段に「ひらふ」「こざわ」と書かれているので、「小皿のピラフを食っちゃう」と連想してしまった。

羊蹄山
羊蹄山

 倶知安からはニセコバスに乗って山を越え、日本海側の岩内へ向かう。バスの発車まで1時間ほどあるので、碁盤の目のようになっている町を散策する。道路が広く閑散としているが、スキーのシーズンになったら賑わうのだろうか。
 10時20分発の岩内行きのバスに乗ると、まずは国道5号線を隣の小沢駅まで行くようだ。私は乗ったことがないのだが、1985年まで小沢から岩内までの約15kmを結ぶ岩内線が走っていたので、その勾配の緩やかな廃線跡に沿った道を行くのだろう。
 45分ほどで岩内バスターミナルに着き、漁港などを散策する。昼になってお腹が空いたので、そば屋に入る。岩内はニシンが名物なので、にしんそばを注文、寒いので温まる。

小樽駅で長万部行きに乗り換え
小樽駅

岩内から寿都、黒松内へ

 次は日本海沿いを40kmほど南東に位置する寿都へ、12時13分発のバスに乗る。乗客は地元の高齢者が5人ほどで、岩内の町を出ると信号もほとんどないので、右に日本海を見ながら延々と国道229号線を走る。
 曇っていて天気がよくないのもあるが、漁村のような小さな集落がポツポツとある程度で、寂しさ極まるところだ。その集落で乗客が一人ずつ降りていき、ブザーが鳴らないのにバスが数分停車した。運転手が用を足すためであった。
 寿都が近くなると風力発電の大きな風車が見立つ。風が強い場所のようだ。寿都湾を周りこむと、寿都ターミナルに13時20分に着いた。

寿都の漁港
寿都の漁港

 寿都の景勝地は弁慶岬だが、町からはだいぶ離れている。とくに行くあてもないので、「みなとま〜れ」という道の駅へ行ってみると休館であった。建物の奥の港に漁船が30隻ほど停泊している。あまりにも風が強くて長くはいられない。
 寿都からは14時発の長万部行きのバスに乗り、途中の黒松内駅へ向かう。岩内から来た道を風車を見ながら少し戻り、海と別れて南の内陸へ入っていく。10kmほど走ると黒松内駅に着いて、函館本線に乗り換える。

函館本線・黒松内駅
黒松内駅

 黒松内はちょっとした温泉地のようで、駅近くにはこじんまりとした旅館が数軒あるが、やぱっり寂しさが漂っている。
 黒松内の駅舎は大きな平屋で、今は無人駅だが窓口や改札口があり、駅舎が建てられた頃は乗客が多かったのだろうと思われる。
 昔ながらのホームには「北限 ブナの木」というモニュメントが置かれている。この辺りがブナの北限で天然記念物に指定されているそうだ。

黒松内駅のホーム
黒松内のホーム

 

黒松内から函館へ

 黒松内14時54分発の列車に乗って長万部へ向かう。乗客は数人しかいない。蕨岱といいう秘境駅をすぎて20分ほどで長万部に着いた。
 函館行きの列車は約1時間後なので、長万部の町を散策する。海へ行ったり、駅を歩道橋の上から眺めたりして、戻る途中で名物の「かにめし」の店に入った。

長万部の海岸
長万部の海岸

 16時9分発の普通列車の改札時間になり、ホームへ降りると雪が舞ってきた。この列車は砂原周りで時間がかかるので、森で後続の特急に乗り換えるつもりだったが、八雲に着くとホームは大勢の高校生たちで埋まっており、ここで乗り換えることにした。
 日が暮れて真っ暗の駅前を30分ほど散策して、駅に戻ると17時14分発の特急北斗がやってきた。北海道全線フリーきっぷがあるので、特急も自由席なら乗り放題である。ゆっくり座って、18時18分に函館に到着。
 久しぶりに大都会に来たような気分になり、駅を出ると函館の街は雨に濡れていた。

函館駅
函館駅

 明日は函館を観光して夜の北斗星で東京に帰ることにしている。
 (つづく)

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