ローカル鉄道の時間旅行
杉森涼
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黄金色に輝く稲穂と小湊鉄道


 今日は午後から仕事があるので、近場で夏を楽しみたい。
 富士宮に富士山が見える蓮田があり、以前から行ってみたいと思っているのだが、この時期は湿度が高い。
 今日も富士山が見えそうにないので、懐かしい夏の匂いを感じながら小湊鉄道に乗ろうと思う。
 小湊鉄道は、東京から最も近い場所で昭和の雰囲気を存分に感じられる鉄道で、房総里山トロッコという観光列車も走っている。

稲穂と小湊鉄道
稲穂と小湊鉄道

横浜から五井へ

 2025年8月23日 土曜日
 最寄りの藤沢を5時31分に出る東海道線で隣の大船へ行き、5時43分の横須賀線・総武線直通の千葉行きに乗る。土曜日の早朝なので通勤客の姿はなく空いている。
 東京湾をぐるっと回って千葉で君津行きに乗り換え、小湊鉄道の起点である五井には7時45分に着いた。
 跨線橋を渡って小湊鉄道のホームへ降りると一瞬にして昭和レトロに包まれる。五井の駅名標も「ごいごいすー」だ。
 3番線にはすでに一両編成の上総牛久行きが入線している。小湊鉄道の主力でクリーム色と朱色のキハ200形ではなく、たらこ色のキハ40である。いずれにしても昭和の古い車両で嬉しい。

五井駅・キハ40
五井

五井から海士有木へ

 8時01分、ゆっくりと発車。国鉄時代の懐かしいオルゴールの音楽が流れて「本日も小湊鉄道をご利用いただきまして…」と車内放送が始まる。
 五井を出るとすぐに田園風景に変わる。一つ目の駅の上総村上は田んぼに囲まれていて、駅舎も鄙びている。
 今日は黄金色に輝く稲穂を見ながら、ひと駅区間を歩こうと思ってやってきた。時間もないので、できるだけ五井に近い所にしようとGoogleマップで調べ、海士有木〜上総三又の区間に決めた。
 海士有木(あまありき)という地名は、漁夫の集落を意味する海士(あま)と、この地に蟻木(ありき)城があったのが由来だという。
 五井から9分で二つ目の海士有木について下車、車掌さんに切符を手渡す。
 木造駅舎は小湊鉄道が開業した大正14年に建てられ、国の登録有形文化財に登録されている。

海士有木から上総三又へ歩く

 海士有木を後に、約1.8km先の上総三又へ向けて集落を歩いて行く。集落を抜けると通りに出た。一面に田んぼが広がっている中を小湊鉄道の線路が南へ、一直線に延びている。
 そろそろ上りの列車の時間なので、撮影ポイントを探しながら待っていると、キハ200形が2両編成でやってきた。

小湊鉄道キハ200形
キハ200形

 次に来る列車も上りの五井行きで、約30分あるので上総三又の近くまで歩く。田んぼの中に用水路のような新堀川が流れ、すぐ西の養老川に注いでいる。
 2019年の豪雨で養老川や新堀川が氾濫して、この辺りは冠水したらしい。
 黄金色に輝く稲穂を見ながら待っていると踏切の音が聞こえて、今度はたらこ色のキハ40が1両でやってきた。
 ここで一句ではないが、この風景を眺めながら、青春18きっぷのキャッチコピーのようなものを考える。
 「懐かしい夏の匂いは、あの頃の夢を思い出させてくれます。」

稲穂と小湊鉄道キハ40・たらこ色
新米でタラコのおにぎり

 この後、15分後に下りの上総中野行きがあり、さらに20分後に養老渓谷行きの里山トロッコが来ることになっている。
 広大な田んぼが広がって清々しいのだが、9時をすぎてかなり暑くなってきた。日影がまったくないので、上総三又の駅舎に避難しようと思う。
 上総三又の駅舎はログハウス風で比較的新しいようだ。冷房はないが直射日光は避けられる。自販機があったので水分補給をする。
 上総中野行きのキハ200形は2両編成で混んでいた。みんな養老渓谷へ涼をとりに行くのかも知れない。

上総三又駅・キハ200形
上総三又駅

 その列車を見送り、再び田んぼに戻って里山トロッコを待つ。やがて、かわいらしいSLの形をしたディーゼル機関車が4両の客車を牽引してやってきた。
 客車のうち2両がトロッコだが、乗客はあまりいないようだ。この猛暑では仕方がない。
 「ゆっくり走ると、心も黄金色になった。」

稲穂と小湊鉄道・房総里山トロッコ
小湊鉄道・房総里山トロッコ

上総三又から五井へ

 暑くていられないので、上総三又発9時56分の列車で帰ることにする。午後からは仕事をしなければならない。
 田んぼに囲まれたホームで待っていると、白地に濃淡のグリーンラインのキハ40が2両編成で入ってくる。

上総三又駅・キハ40
上総三又

 ボックスシートに座って田園風景を眺め、上総村上をすぎるとオルゴールが流れて五井に戻ってきた。昭和から令和に戻ったような気分になる。
 昭和ノスタルジックに後ろ髪を引かれながら、JRに乗り換えた。
 日曜日は仕事をして、月曜日は「日本一のモグラ駅」土合に行こうと思う。
 (つづく)


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