東京から鈍行で晩夏の姨捨棚田へ東京から日帰りの範囲で、どこか遠くまで行きたい。新幹線を使えば、北海道や九州へも行けてしまうので、特急に乗らない鈍行の旅にする。 夏の終わりの原風景を見たいので、只見線に乗ってみようかと思ったが、新幹線なしでは無理である。 色々と考えて、北海道&東日本パスを利用して、1日目は日本三大車窓の一つ「姨捨の棚田」に決めた。 中央本線で松本へ行き、姨捨の棚田を見て、軽井沢からバスで碓氷峠を下り、釜めしの横川から高崎に出ようと思う。 時刻表を調べると、早朝に出発すれば横浜には20時に帰って来れることが分かった。 高尾から松本へ2025年8月20日 水曜日高尾発6時15分の松本行きがあるが、6時02分の大月行きに乗る。E233系の通勤電車で、今年の3月から2階建てのグリーン車がついている。 ![]() 高尾 中央線沿線には富士山の眺めがよい山が多い。私は登山が好きなので、この電車はたまに利用している。私が主に乗る秋や冬は、一両に数人しか乗っていないが、夏休み期間なので一両に15人くらい乗っている。 小仏トンネルを抜けると東京都から神奈川県に入り、藤野をすぎて山梨県に入ると徐々に山深くなっていく。左窓に桂川を見ながら河岸段丘を走り、駅ごとに乗客が下りて車内が閑散としてくると、6時38分に終点の大月に着いた。 松本行きは16分後なので、トイレを済ませて駅前に出てみる。何度か登ったことがある岩殿山が駅の背後に聳えている。 松本行きの電車は211系。国鉄末期から東海道線などで使われていた通勤電車で、旅情がまったくない。車内はすべて窓に背を向けて座るロングシートで、なんとか空いている席を見つけたが、松本まで約2時間半、これは辛い。 ![]() 大月 10年くらい前までは山スカと呼ばれる115系が走っていて、4人向かい合わせのボックスシートで旅情が感じられたのだが…。 大月を出て笹子トンネルと抜けると勝沼で、ぶどうの棚が随所にある。緑色の葉は見えるが、紫色のぶどうは見えない。ここから北の塩山を迂回しながら甲府盆地へ下っていく。甲府に近づくにつれて通勤電車のようになってきた。 7時43分に甲府に着くとほとんどの乗客が下車して、かわりに高校生がたくさん乗ってくる。 13分走って韮崎に着くと、大半がで下車して高架のホームが高校生で溢れている。長年に渡ってサッカー日本代表を引っ張ってきた中田英寿さんが出身の韮崎高校にでも通っているのだろうか。日野春で残りの高校生が全員下車すると車内は閑散なる。 雲がほとんどなく晴れてはいるが、猛暑で湿度が高く、北岳や甲斐駒ヶ岳、八ヶ岳はまったく見えない。 小海線が分かれる小淵沢を出ると中央本線の最高地点である富士見に着く。標高は955mなので甲府から680mも登ってきたことになる。 このまま乗っていても松本に早く着きすぎるので、上諏訪で途中下車しようかと考えていたが、汗だくになりそうなので松本でゆっくりしようと思う。 ちらっと諏訪湖を眺め、岡谷、塩尻をすぎて、松本に9時35分に着いた。ホームに降りると「まつもとーまつもとー」と旅情たっぷりの到着放送が流れる。 さて、次に乗るのは11時30分発の長野行き普通電車である。約2時間あるので、まずは松本城を見に行く。松本駅から徒歩20分だが、あまり汗をかきたくないのでバスに乗る。駅からお城までは10分ほどだが、待ち時間が10分以上あった。 門をくぐるとお堀の石垣に天守が聳えている。天守が国宝指定された5城の一つだという。 ![]() 松本城 お城には詳しくないが、4月に姫路城を見たので、残りの犬山城、彦根城、松江城にもそのうち訪ねたい。しばらく天守を眺める。 松本駅への途中に郵便局があり、風景印が欲しいので歩いてへ戻ることにする。次の電車まであと50分ほどあるので、信州のそばを食べようと思う。駅舎の看板には、現在の気温35℃と表示されている。 汗だくになりながら蕎麦を食べ、篠ノ井線のホームへ向かう。駅スタンプにはアルプスと松本城が描かれ、標高586mとなっていた。 松本から姨捨へ11時30分発の篠ノ井線・長野行き普通電車は、観光客でほぼ席は埋まっているが、なぜか4人掛けのボックスシートが一つだけ空いていた。![]() 松本 車内は進行方向の左側にボックスシートがあり、右側はロングシートになっている。姨捨の車窓が見える右側をボックスシートにしたほうがよいと思う。 松本を出ると大糸線が左へ分かれ、篠ノ井線は千曲川の支流の犀川に沿って緩やかに下っていく。明科をすぎると犀川と離れ、住宅街が尽きて山間への登りにかかる。 登りきると西条で、冠着まで長閑な田園風景が広がっている。収穫前の田んぼが黄金色にはまだ早いが美しい。姨捨の棚田はどんなだろうと、期待がよりいっそう膨らんでくる。 一面の稲穂を眺めながら、聖高原、冠着へと旅情が感じられる駅名がすぎていく。緩やかに登っていくと、テンションも徐々に上がってくる。 冠着の標高は677m。篠ノ井線で最も高い位置にある駅だという。ここから姨捨を経て、標高360mほどの善光寺平へ下っていく訳だ。 全長2656mの冠着トンネルをくぐって森を抜ると、右窓にパッと視界が開け、善光寺平の風景が広がった。なるほど、これが日本三大車窓かぁと思った。鉄道に乗っていながらこんな車窓が見れるとは…。 ボックスシートは左側なので右窓を眺めるのだが、右側のロングシートの観光客は絶景に背を向けて全員スマホに夢中になっている。この人たちにとっては、篠ノ井線は松本から長野への単なる移動手段のようだ。 絶景を眺めながら12時14分、スイッチバック駅の姨捨に着いた。この電車は1番線に6分停車、その間に名古屋行きの特急しなのが本線を通過していく。 ![]() 姨捨 跨線橋を渡って善光寺平や棚田を見渡せる2番線へ行く。展望デッキがある。6分も停車するのに一人も下車しない。 姨捨の棚田は遠くに小さく見える程度なので、期待していたほどではなかったが、善光寺平は絶景である。 1本後の長野行きまで約1時間の散策ができるので、まずは善光寺平と列車の眺めがよい場所へ歩く。約15分後に長野行きの特急が来るのでそれを見ようと思う。 山の中腹とは言え、さすがに暑いので日陰で待つ。ただ時折、吹き抜ける風には涼しさが感じられる。都心ではあまり聞かれなくなった蝉がひっきりなしに鳴いている。懐かしい夏が思い出される。 やがて線路の音が響き、特急列車がやってきた。長野へ向けて下っていくと、列車の音が止み、再び蝉時雨となった。 姨捨駅に戻って、駅スタンプを押す。明治33年開業の瀟洒な駅舎が描かれている。松本駅が開業したのは明治35年なので、篠ノ井から松本へ線路が延びていったことが分かる。 松本駅よりも姨捨駅の方が39mも標高が低いのは意外だった。 ![]() 姨捨の棚田 姨捨から篠ノ井、しなの鉄道で軽井沢へ13時19分発の電車で篠ノ井へ向かう。姨捨駅から本線に戻り、逆行して善光寺平へ下っていく。スイッチバックの桑ノ原信号場、稲荷山をすぎて14分で篠ノ井に着く。ここからは、しなの鉄道なので北海道&東日本パスは使えない。軽井沢まで1470円の乗車券を買う。 しばらく時間があるので散策する。駅構内は広いが何本もある側線には草が生えている。駅前も閑散としている。構内を北陸新幹線が通ってはいるが、駅は必要なさそうだ。信越本線がJRから第三セクターに移管されたのも頷ける。 13時58分発の電車は2両編成で混んでいた。なんとか空いている席を見つけて座る。ロングシートで車窓は見れないので、目を閉じる。朝が早かったので、うとうとしてくる。 山頂が雲に隠れた浅間山をちらっと見たくらいで、15時17分、軽井沢に着いた。 ![]() 軽井沢 軽井沢から路線バスで横川へ軽井沢から横川への信越本線は、長野新幹線が開業した際に廃線になっている。スキージャンプの原田選手の「船木ぃ〜」が印象的な長野オリンピックの頃である。高崎までは新幹線に乗れば早いが、横川から列車に乗りたいので、路線バスを利用する。横川まで約35分、運賃は520円。JRバスだが、北海道&東日本パスは使えない。 軽井沢発15時35分のバスは、横川発16時30分の高崎行き電車に接続している。このJRバス関東の碓氷線はバイパス経由だが、めがね橋などの遺構が残る旧道を運行する日もあるらしい。 バイパス経由と言ってもカーブが多く、右へ左へ体が揺れる。ヘアピンカーブもある。車窓を眺めていると異様な山容の岩山が聳えている。これが妙義山かぁと思う。 やがて碓氷峠を下りきるとスピードを上げ、定刻より10分ほど早く横川駅に着いた。明治18年創業という「峠の釜めし」発祥の地である。 荻野屋の出店が駅に併設されていて、ベンチで釜めしを食べている人がいる。16時という中途半端な時間帯なので今回はパスする。 ![]() 横川 横川から高崎、横浜へ横川からは信越本線に乗り、碓氷川に沿って下っていく。女性の車掌さんのアナウンスが聞き惚れてしまうような美声だった。高崎着17時02分。軽井沢から高崎までは、新幹線なら自由席利用で2640円かかるが、所要時間はたったの20分。バスと信越本線なら1026円。私は北海道&東日本パスがあるのでバス代のみの520円で済んだ。 高崎から横浜へは普通電車で2時間半。疲れたのでグリーン車に乗る。距離が134kmなので、Suicaグリーン券は1550円である。 17時13分に高崎を出ると、徐々に日が暮れてきた。大宮をすぎると通勤客でいっぱいになり、日常の会社帰りの気分と同じだ。赤羽から湘南新宿ラインに入る。 今日は暑かったので、冷たいビールを飲みたくなってきた。 (つづく) |
| 涼を求めて 夏の日帰り鉄道旅 |
|
東京から鈍行で晩夏の姨捨棚田へ 銚子電鉄の展望、犬吠、まずい棒 黄金色に輝く稲穂と小湊鉄道 上越線の土合と湯檜曽でモグラになる 北関東大回り乗車 |







