|
陰陽道を行く 青春18きっぷの旅 (1日目) 横浜から15時間! 普通列車を乗り継ぎ鳥取へ
1ヶ月前、6年ぶりに長い旅をした。北海道&東日本パスを使用して6日間の「鈍行みちのくひとり旅」であった。
久しぶりに旅に出たことで、また行きたくなってしまったのだが、使えるお金があまりない。だけど、行きたい気持ちを抑えることができないので、「青春18きっぷ(3日間用)」を使ってどこかへ行くことにした。
私は北海道が好きなのだが、先月の東北旅で函館まで足を延ばしたので、今回は西へ向かおうと思う。京都にはたまに行っていたので、その先まで行きたい。
行きたいところは鹿児島の開聞岳を筆頭に、長崎や広島、鳥取砂丘などが候補に上がるのだが、さすがに九州は無理である。
また、春休みに加えて桜が満開になる時期なので、観光客が極端に多い場所は避けたい。ホテルも空いていないだろう。あれやこれや考えて、まだ行ったことがない鳥取砂丘に決めた。
神奈川から鳥取まで、単に往復するだけでは面白くないので、行きは東海道本線と山陽本線を乗り継ぎ、姫路から鳥取へ陰陽を縦断、帰りは山陰本線と京都丹後鉄道で京都に出ようと思う。
青春18きっぷの節約旅で、列車に乗っているばかりになりそうだが、ご当地のB級グルメくらいは楽しみたい。
 青春18きっぷ(3日間用)
藤沢から普通電車で姫路へ
2025年4月3日 木曜日
新幹線を使わずに東海道本線の普通列車を乗り通すのは約25年ぶりである。時刻表で乗り継ぎを調べると、豊橋〜大垣と米原〜姫路までは新快速が走っていて、静岡あたりにないのは当時と変わっていないようだ。
その昔、京都に住んでいた若い頃は、節約のために京都から豊橋まで普通列車に乗り、豊橋から熱海までの区間だけ新幹線に乗ったことが何度かあった。
ムーンライトながら、季節列車で寝台車の付いていない急行銀河にも何度か乗ったことがある。そんなことを懐かしく思い出しながら、まずは姫路までの乗り継ぎをチェックする。
1日目は普通列車にひたすら乗って、鳥取を目指すだけである。東海道本線と山陽本線を何度乗り継げばよいのか途方に暮れるが、どんなに朝早く出発しても姫路に着くのは15時17分であることが分かった。
これを元に乗り継ぎを考え、1本目の電車は藤沢発6時08分の沼津行きに決める。因みに、私の最寄り駅である藤沢は横浜から普通電車で20分、東京から50分に位置する湘南の街である。全国的にはサザンオールスターズの茅ヶ崎の方が有名かも知れない。
待ち時間の少ない乗り継ぎ地獄になるので、せめて沼津までは優雅にグリーン車に乗ろうと思う。
 藤沢
いよいよ青春18きっぷの旅がはじまった。普通車は混んでいるが、下り電車なのでグリーン車は空いている。沼津に着くまでに軽い朝食とトイレを済ませておかねばならない。
小田原あたりで雨が降り出し、暗雲が立ち込めてきたが、定刻の7時27分に沼津に着いた。次に乗るのは、8分後に発車する静岡行きである。通勤通学の時間帯でホームには長い行列ができている。これでは始発の三島からでも座れないだろう。
20分ほど立たされたが、吉原で席が空いた。晴れていれば富士山が見えて気分が上がる区間だが、今日はまったく見えない。静岡着8時29分。
浜松行きは2分後の出発で慌ただしく、座れないと思っていたのだが、案外に空いていて座ることができた。
熱海から豊橋までは190kmほどあるが、快速列車はまったく走っていない。静岡から浜松へも1時間10分ほどかかる。東海道本線ではこの辺りが最も滅入る区間なので、ウトウト居眠りをして何とかやり過ごす。生憎の天気で沿線の桜もパッとしない。
大井川を渡って掛川をすぎると徐々に乗客が増え、天竜川を渡ると9時42分に浜松に着いた。2分後の豊橋行きに乗り継ぐ。通勤時間帯をすぎたので、浜松からどこかへ行く人は少なく、余裕をもって座ることができた。
 浜松
弁天島から新居町にかけては浜名湖の眺めがよい区間である。豊橋着10時18分。小田原から新幹線に乗っていれば、姫路に着く時刻である。
豊橋で名物の稲荷寿司でも買おうかと思っていたが、お腹が空いていないので3分後の電車に乗り継ぐ。
大垣行きの新快速は転換クロスシートの新型車両で快適だが、ずっと車窓を見ているので肩が凝ってきた。こういう場合は乗り換える度に左右の席を変え、右窓と左窓を交互に見るようにすると疲れが和らぐ。
浜名湖では雨が降っていたが、豊橋を出ると徐々に雲が切れて晴れてきた。桜も青空で映えるようになった。
50分ほどで名古屋に着くと乗客が入れ替わる。木曽川を渡ると雪が残る伊吹山が見えるようになって、高架駅の岐阜に着いた。
県庁所在地の駅にも関わらず、南口はラブホテル街で、周辺は活気に乏しい。昼下がりでけだるく、昼顔のような雰囲気が漂っている。
対照的に北口は市街地で、右窓には標高329mの金華山の山頂に建つお城が見える。
乗客もだいぶ減って長良川、揖斐川を渡ると、11時47分に大垣に着いた。
ここでは24分の待ち時間があり、ひと息つけるがランチをする余裕はない。トイレを済ませ、座りたいので早めに米原行きの電車に乗り込む。案の定、発車寸前に満員になった。
 大垣
大垣まではずっと市街地や住宅地だったが、関ヶ原で標高差100mほどの山越えとなり、車窓も鄙びてくる。岐阜県から滋賀県に入り、右から北陸本線が合流すると12時46分に米原に着く。
ここも乗り継ぎ時間は4分しかない。新快速の姫路行きは10両編成で空いていたが、次の彦根でほぼ席は埋まった。米原から姫路までは約2時間半、さすがにうんざりしてくるが、じっと座ってさえいれば着くんだと自分に言い聞かせる。
琵琶湖線は、昔よく乗ったので車窓は懐かしく、色々と忘れていた記憶がよみがえる。石山の手前で琵琶湖を見て、住んでいたことがある山科をすぎると、京都着14時13分。
当初は京都から山陰本線で鳥取へ往復しようかとも考えていたが、それは面白くないので姫路から鳥取、天橋立へ時計回りにぐるっと周ることにした。
いわば京都を起点に山陽から山陰へ、陰陽道を行く旅である。陰陽師のように何かを占うわけではないが、山陰への長閑なローカル線は、今後の人生を見つめるのにちょうどよい。
京都を出て大阪に着くと乗客がだいぶ減った。隣に座っていたサラリーマンも下車して、ゆったりと座れるようになった。姫路まではあと1時間である。
神戸をすぎて、淡路島への明石海峡大橋や東経135度の子午線に建つ天文科学館を眺め、加古川を渡るとビルの間にお城が見えて、15時17分に姫路に着いた。遅れが出ることも想定していたが、定刻通りであった。
姫路に来たのはもちろん姫路城を見るためで、1時間ほど観光しようと思う。ちょうど桜も咲いている。
桜が咲く姫路城
姫路からは姫新線または、上郡まで行って智頭急行に乗る予定で、観光の時間次第である。いずれにしても鳥取に着くのは20時38分となっている。
とりあえず今は、乗り継ぎのことは忘れて、姫路城の散策を楽しみたい。
 姫路駅・キャッスルビュー
姫路駅から姫路城へ、幅員50m、1kmのメインストリートである大手前通りが一直線に延びていて、駅ビルのキャッスルビューというテラスから見渡せる。
こんな駅は日本中を探してもないだろうと言えるくらい眺めがよい。この景色を見たら行かなければならない。
ヒメージダウン、ヒメージダウン、ヒメージダウンダウンダウン♪とBoowyの曲を口ずさみながら15分ほど歩く。桜門橋を渡ってお堀の中に入ると、青空に白鷺城が映えていてテンションは上がった。
じっくり入城する時間はなく、三の丸広場で引き返すのが惜しいが、桜はほぼ満開で花見客で賑わっている。
姫路城が白鷺城と呼ばれるのは、白漆喰の外壁が飛び立つ前の白鷺に似ていることに由来するからだが、もしかしたら色白の美しいお姫様を表現しているのかも知れない。
 姫路城と桜
45分ほど姫路城と桜をゆっくり眺めて駅へ戻る。16時23分発の姫新線はすでに出てしまったので、17時07分発の播州赤穂行きに乗ることにする。
それまで20分ほどあるので、名物である「まねきのえきそば」を食べようと思う。ネット記事のどこを見ても、かん水入りの中華麺に和風出汁と書いてある。
かん水とは何だかよく分からないが、かん水がなければ中華麺ではないというから、かん水入りなどと書かなくてもよいのではないか。
1番人気の天ぷらえきそばを注文する。ラーメンに似たものだと予想していたがハズれた。私の間隔ではこれは単なる温かい「そうめん」だ。
天ぷらは小さな桜エビが2〜3尾入っているだけで、99%がふにゃふにゃの衣であった。もちろん不味くはないが、戦後すぐの頃に誕生したというので、お腹を満たすためだけのものなのかも知れない。
 まねきのえきそば
姫路から上郡、智頭急行で鳥取へ
朝食後は何も食べていなかったので、エネルギーが補給されて疲れが取れた。体も温まった。播州赤穂行きに乗り、途中の相生で乗り換えるので、居眠りをしないように気をつける。
17時26分に相生に着き、3分後の新見行きに乗り換える。黄色い113系で、まだこんな電車が走っているんだなと思ったが、昭和の国鉄時代の車両はよいものだ。「青春」18きっぷに相応しい。
新見が中国山地にあるのは分かるが、今一つ地理に自信がないので、この列車が上郡を通るか、念のため女性の車掌さんに確かめた。
17時41分に上郡に着き、夕暮れの中を走っていく黄色い113系を見送る。
 上郡
ここからは青春18きっぷが使えない智頭急行に乗る。JRで津山を回ると今日中に鳥取には着けないので仕方がない。上郡から智頭まで「特急スーパーいなば」に乗ろうと思う。
指定席券売機では郡家や鳥取までは買えるが、智頭までの表示がない。駅員さんに尋ねると、「いなばですか?車内で買ってください!」と言われた。
いなばは因幡の白兎で知られる鳥取の地域名だが、いなばと言えばB'z、日ハム、ツナ缶、100人乗っても大丈夫、など色々と連想してしまう。
18時03分発のスーパーいなばに乗って、車掌さんから乗車券と特急券を買う。2150円であった。窓側の席は埋まっていて通路側の席に案内される。暗くなってほとんど外は見えないので、席はどこでもよい。
隣に座っているおじいさんは、鳥取から岡山まで病院通いをしているのだという。私が智頭で降りると言うと、智頭に何かあるんかいな?と笑った。鳥取の人でも智頭には用はないようだ。
18時43分に山中の智頭に着くと、濃い霧に包まれていて薄ら寒い。
このままスーパーいなばに乗っていれば、1時間20分も早く鳥取に着くのだが、1680円余計にかかる。青春18きっぷの節約旅なので、智頭で降りなければならない。
次に乗る因美線の鳥取行きは1時間後である。雨がポツポツ降っているので、駅で時間をつぶす。辺りを見回したが、食事ができる店はなさそうだ。
智頭では「ちずぶるー」という藍染工房を推しているそうだ。澄んだ藍色が特徴だそうで、駅舎の入口にその暖簾が掛かっている。外から見ると老舗のような雰囲気である。
ちずぶるーを逆にして、ブルーチーズを名産にしたらどうかと、つまらないことを思う。疲れてきたようだ。
 智頭
19時38分発の鳥取行きは、気がつくとすでに入線している。キハ47の如何にも古臭い赤い車両で、たらこと呼ばれているらしい。明太子ではないんだなと思う。
19時10分頃に上りと下りの「スーパーはくと」がすれ違う。駅スタンプに描かれている「鮎のいる清流、千種川」の上郡を散策してから、この列車に乗ってきてもよかった訳だ。
今日乗る最後の列車がようやく鳥取へ向けて出発。車内には数人しか乗っていない。乗降客のいない因幡社、用瀬、と山中の小駅に停まり、若桜鉄道が分かれる郡家に着くと、下り列車との待ち合わせで15分も停車し、鳥取に着くのを焦らされる。
郡家から暗闇を14分走って、20時38分に高架駅の鳥取に着いた。藤沢から鳥取まで営業キロで716km、11本の列車を乗り継ぐ14時間半の長い旅であった。この時点で青春18きっぷ(10000円)の元は取れただろう。
 鳥取
改札を出るとそろそろ21時になるので閑散としている。小雨が降っていて店を探すのも面倒なので、駅前で軽いコンビニ飯と缶ビールを調達する。
ホテルは直前に予約したので、駅から歩いて10分ほどかかったが、シングルなのに部屋は広く、どうやら合宿などで利用されている部屋らしい。
明日は朝7時の路線バスに乗って、まずは鳥取砂丘を散策しようと思う。
(つづく)
|