ローカル鉄道の時間旅行
杉森涼
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大沼と渡島駒ヶ岳


 一昨日、東京を発って函館にやってきて、昨日は所用があったので改めて南北海道の旅を始める。朝4時半に起きると雲は多いが天気はまずまずのようだ。
 2日目の今日は列車の時刻と相談して、大沼をチラッと観光した後、赤井川駅から歩いて渡島駒ヶ岳へ登り、室蘭まで行くことにしている。
 赤井川に停車する列車は1日6本しかなく、秘境駅と言ってもよい。
 登山に最適なのは大沼始発の7時30分の列車なので、必然的に函館5時54分発に乗らなければならない。

函館から大沼へ

 2015年10月26日。
 5時40分に函館駅に着き、ホームへ行くとすでに5時54分発の普通列車が入線している。ディーゼルカー(キハ40)の3両編成である。

函館発・長万部行きの始発列車
長万部行きの始発列車

 この列車は長万部行きだが、鹿部経由なので赤井川は通らない。函館本線の大沼〜森の区間は、駒ヶ岳の西麓を行く山線と東麓を行く海線に分かれており、この列車は海沿いの鹿部を経由する。
 白々と夜が明けて発車、乗客は数人だけである。
 七飯をすぎて函館郊外の市街地が尽きると、山深くなってトンネルをいくつも抜けていく。やがて小沼に出ると薄っすらと駒ヶ岳が見えて、6時29分に大沼に着いた。
 ホームでは3両編成の切り離し作業が行われ、先頭車両が鹿部経由の長万部行き、2両目が私がこの後に乗る森行き、3両目は函館行きとなって戻るようだ。
 赤井川への列車は1時間後なので、大沼の観光拠点である隣の大沼公園駅までの約1kmを歩く。

函館本線・大沼駅
大沼駅

 しばらく歩いて跨線橋を渡っていると、ちょうど長万部行きの列車が来て森の中へと消えていった。
 跨線橋を下ると大沼公園駅はすぐそこである。さすがに観光地でレンタサイクルの自転車がたくさん並んでいる。のんびりと大沼周辺を自転車で周るのも気持ちよさそうだ。
 散策できる時間は45分ほどなので、洋風の駅舎内のコインロッカーに荷物を放り込んで、駒ヶ岳の眺めがよい「島めぐりの道」を一周することにした。
 大沼には小さな島が多数あり、道標にしたがって公魚島、浮島、アイヌ島…と橋を渡っていくと、日の出島が駒ヶ岳のビューポイントである。
 朝靄でぼんやりしているが、水面の上に雪で白くなった駒ヶ岳が朝焼けのピンク色にほのかに染まっている。まだ朝7時で観光客の姿はなくとても静かだ。

大沼と駒ヶ岳
大沼と駒ヶ岳

 大沼の西側は森になっていて、紅葉のピークはすぎていたが黄葉は盛りであった。
 そろそろ時間になり駅近くまで戻ると、廃止寸前の寝台特急カシオペアが通過していった。

大沼公園から赤井川へ

 7時32分発の列車がやってきて隣駅の赤井川へ向かう。車内は高校生がちらほらいる程度で閑散としている。下り列車だからこんなものなのだろう。
 大沼公園から5分で赤井川に着くと、小さな駅舎があるだけの寂しい駅だ。紅葉が残る森の中へ消えていく列車を見送り、駒ヶ岳へ向けて出発する。

赤井川駅から紅葉に消える列車
赤井川駅で列車を見送る

赤井川から渡島駒ヶ岳に登る

 両側に灌木の茂った舗装されていない線路沿いの道を進んで踏切を渡ると、大沼に注ぐ赤井川という川が流れていている。川面に朝日の木漏れ日が反射してキラキラと綺麗だ。
 大沼レイクゴルフクラブをすぎると、登山口まで約5kmの何もない道を北東へ歩いていくだけである。しばらくは平坦な舗装路なので歩きやすい。
 両側には背の高い紅葉の樹木が並んでいて、時折正面に駒ヶ岳の尖った山頂が見える。
 ヒグマがいるのか事前に調べると、この辺りにはいないようであったが、樹木で薄暗く車もまったく通らないので不気味だ。念のため、鈴を鳴らしながら進む。
 駅から約30分で車止めのゲートに着く。案内板には駒ヶ岳は活火山で、登山ができる期間は10月までと記されている。
 やがて舗装路から砂利道となり、徐々に傾斜が増していく。五合目に着くと山頂まで3000mの表示がある。
 9時前に登山口の六合目に着いた。赤井川駅からは約7kmである。

渡島駒ヶ岳の登山口
六合目の登山口

 駐車場があり、ここまでは車で来ることができるので、お金に余裕があればタクシーでもよさそうだ。
 駒ヶ岳は標高1131m、かつては富士山のような円錐形をした標高1700mほどの山だったが、1640年の大噴火で山頂部が吹き飛んで、現在のような形になったという。
 一般の方は危険につき山頂までは行かないようにと表示があるので、目指すのは標高900mの馬ノ背で、1時間の登りである。
 よく整備された広い道なので歩きやすい。砂礫なので富士山と同じような感じだ。登山道は積雪で薄っすらと白く、両側にはカラマツが黄葉している。

渡島駒ヶ岳の登山道
登山道

 20分ほど登ると九合目で、山頂まで500mとの表示があってあと少しだ。この辺りまで登ってくると樹木はほとんど育たないようで荒涼としている。
 だんだんと険しい山頂部が大きく見えるようになり、9時35分に馬ノ背に着いた。登山道の「山頂まで〇〇m…」というのは、馬ノ背までのことらしい。
 ベンチに座って駒ヶ岳山頂の鋭く尖った剣ヶ峯を眺める。右には標高1108mの砂原岳が見え、登山道を振り返ると大沼と小沼が靄の中にぼんやりしていた。

渡島駒ヶ岳・剣ヶ峯
渡島駒ヶ岳の剣ヶ峯

渡島駒ヶ岳から駒ヶ岳駅へ

 20分ほど休憩すると寒くなってきたので下りはじめ、1時間ほどで赤井川駅近くのゴルフ場に戻ってきた。
 列車の時間までかなりあるので、ここから北海道自然歩道・維新の道というのを隣の駒ヶ岳駅まで歩く。標柱には駒ヶ岳駅まで6.7kmと記されている。
 辺りは畑が広がっているが、休耕地が多い感じである。
 長閑な駒ヶ岳西麓を北へ進むと、剣ヶ峯に隠れていた砂原岳が左に姿を現す。やがて駒ヶ岳は、剣ヶ峯と砂原岳で双耳峰のような形に変わった。見る場所によってずいぶんと違うものだ。

砂原岳と剣ヶ峯
砂原岳と剣ヶ峯

 駒ヶ岳駅に12時30分に着くと、列車の時間までまだ1時間半ほどある。
 空腹だが駅前には郵便局があるのみだ。風景印を捺してもらうついでに、近くに食べる所があるか聞くと、国道へ出れば食堂が2つあると教えてくださった。
 跨線橋を渡って駅を越え、300mほど歩いて国道に出ると、道幅が広く一直線で北海道らしい。
 国道を北へ少し歩くと食堂が2軒並んでいる。広い路側帯には車やトラックが停まっていて、ちょっとしたドライブインのようだ。
 どちらの食堂に入ったか忘れたが、店に入ると田中将大投手の写真がたくさん飾ってある。何故か聞いてみると、店主のおばさんはマー君の大ファンだという。
 定食だったかラーメンだったかを食べて、駒ヶ岳駅に戻った。

函館本線・駒ヶ岳駅
駒ヶ岳駅

 今日は室蘭に泊まる予定になっている。
 13時54分の函館行きの乗って、いったん大沼公園まで戻り、コインロッカーに預けていた荷物を取り出す。
 窓口で特急券を買って、14時16分発の「北斗9号」で東室蘭へ向かう。自由席は混んでいたが、なんとか座ることができ、16時10分に東室蘭に着いた。
 明日、登る予定の有珠山は雲の中であった。
 (つづく)

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