ローカル鉄道の時間旅行
杉森涼
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鈍行みちのくひとり旅
(1日目)
北海道&東日本パスで
東京から秋田へ


 記録的に暑かった昨年の夏、冬になったら流氷を見に行こうと思っていた。
 秋がきて、冬がきて、2月中旬になって例年よりもだいぶ遅い流氷がようやくオホーツク海にやってきた。
 紋別や興部あたりで見ようとルートやホテルも考えていたのだが、今年の流氷は暖冬で規模が小さく、旅行する日には沿岸から離れてしまう予報が出ている。
 東京に住んでいる人間にとって、流氷は一生に一度見れるかどうかなので、どうせならオホーツク海を埋め尽くす流氷を見たい。なので、また来年以降に行くことにした。
 だが、どこかへ旅行したい気分は抑えられなくなっているので、「北海道&東日本パス」を利用して東北地方をぐるっと回ってこようと思う。

北海道&東日本パス
北海道&東日本パス

 第一の候補はまだ乗ったことがない五能線。その後は函館まで足を延ばし、フェリーで大間に渡り、下北半島、三陸海岸を南下しようと考えていた。
 1日目は東京から上越線で新潟に出て、羽越本線で日本海を北上、秋田をに泊まることに決めていたのだが、下調べが甘く、五能線に乗る予定の日は線路補修で運休になっている。
 さらに直前になって最強寒波がやってきた。上越線は大雪で運休、羽越本線も強風で遅れや運休の恐れがあるというので、急遽、東北本線で行くことにした。日本海側のルートと比べると、乗り慣れた東北本線はつまらないが仕方がない。
 荒れた冬の天気でどうなるか分からないが、大まかに下記のような予定を立てた。行き当たりばったりの旅も楽しいぞ、と自分に言い聞かせて出発することにする。

 1日目 東京→秋田
 2日目 秋田→男鹿→大館→弘前
 3日目 弘前→新青森→函館
 4日目 函館→大間→下北→野辺地→盛岡
 5日目 盛岡→宮古→釜石→花巻→福島
 6日目 福島→峠→福島→東京

横浜から宇都宮へ

 2025年2月26日 水曜日。
 横浜駅で宇都宮までのSuicaグリーン券を買い、自動改札に「北海道&東日本パス」を通す。早朝5時25分発の高崎行きに乗って、「鈍行みちのくひとり旅」がはじまった。
 今夜は秋田で泊まることにしている。できるだけ普通列車を利用して、疲れたら新幹線に乗ろうと思う。少なくとも北海道&東日本パスのおトク感は得なければならない。
 私は何度か東北本線を各駅停車で北上したことがあり、宇都宮まではいつもグリーン車に乗っているのだが、いつの間にか101km以上は1550円に値上がりしたようだ。
 居眠りしないように注意して、上野発6時08分の宇都宮行き普通電車に乗り換える。

上野駅・宇都宮行き
上野

 このまま順調に普通列車を乗り継いでいけば、17時14分に盛岡に着けるのだが、栗橋をすぎて利根川を渡り、埼玉県から茨城県に入るとすぐ、古河の手前で急停車した。
 この先の踏切に障害物があって、撤去するのに時間がかかるとの放送があり、古河で30分も停車したままだった。
 東北本線で茨城県にある駅は古河だけなので、私にとって茨城県は鬼門なのかも知れない。確かに自宅から見るとちょうど北東に位置している。
 その後もゆっくりしたスピードで走り、結局、宇都宮には1時間遅れて着き、いきなり予定が滅茶苦茶になった。
 8時02分発の黒磯行きに乗れるはずが、9時12分発になったが、盛岡には17時59分に着けるのでまあ良しとしよう。これくらいは想定内である。

宇都宮駅・黒磯行き
宇都宮

 餃子の街として知られる宇都宮は駅弁の発祥地で、駅ができた1885年(明治18年)に日本初の駅弁が誕生したという。時刻表には各駅で売られている駅弁が列記してあり、宇都宮は駅弁発祥らしく種類も豊富のようだ。
 ただ、普通列車で食べるには勇気がいる。駅弁というものは、在来線の特急や急行に長時間乗る場合に買って、田舎の風景を眺め旅情に浸りながら、ゆったりと食べるものである。
 現在は新幹線の時代になって在来線の長距離列車は淘汰され、普通列車で駅弁を食べている人など皆無である。普通列車でそんなものを食べていれば間違いなく白い目で見られてしまう。
 駅弁は量や質の割りに値段が高いので、私はあまり好きではない。最近では千円札一枚では買えなくなってきている。
 さらに話は脱線するが、宇都宮と言えばTMネットワークの宇都宮隆さんが頭に浮かぶ。縁のあった人の名字も宇都宮だったので、ここに来るたびに思い出したくなくても思い出してしまう。困ったものだ。

宇都宮から一ノ関へ

 宇都宮発9時12分の電車も10分ほど遅れて出発した。前回の6年前に乗ったときは土曜日で混んでいたが、今日は平日なので空いている。
 鬼怒川を渡って那須高原の山麓を走ると、10時15分頃に黒磯に着いた。黒磯発の電車は10時22分なので、ここでトイレを済ませておく。

黒磯駅・新白河行き
黒磯

 黒磯から新白河へは、6年前に来たときはディーゼルカーだったが、すべて電車に置き換わったようだ。車内の乗客は少なく、栃木から福島への県境で風景も鄙びてきた。時折、乗ってくる人も農家のような格好をしている。
 23分で新幹線の停車駅の新白河に着き、慌ただしく郡山行きに乗り換えると、こちらも空いていた。混んでいると座っていても疲れるが、空いていると伸び伸びできて体も楽だ。
 白河の先で阿武隈川を渡る。阿武隈川はこの後、東北本線に何度も近寄ったり離れたりしながら仙台の手前で太平洋に注いでいる。アブクマポーロという強い地方馬がいたことをいつも思い出す。
 11時31分に郡山に着き、10分後の福島行きに乗り換える。昼ごはんを食べる時間はないが、待ち時間が長いよりはましだ。ずっと座っているだけだから、たいしてお腹も減らない。
 二本松あたりまで来ると、先ほどまで青空だったのが、いつの間にか曇って安達太良山は影も形もない。50分足らずで福島に着く。

 福島発12時39分の白石行きは2両編成で、混んでいて座れなかった。なぜ、県庁所在地である福島発の電車が2両編成なのだろうか。ポツポツと雨が降り出し、徐々に風も強くなってきた。嫌な予感もする。
 福島を出ると阿武隈川の支流の松川を渡る。松川を遡った上流に峠の力餅で知られる奥羽本線の峠駅があり、この旅の最終日に訪れてみようと思っている。福島市街にはまったく雪はないが、標高差550mを登った峠駅は積雪がすごいのだろう。
 福島県から宮城県に入り、白石で仙台行きに乗り継ぐと4両か5両の長い編成でガラ空きである。徐々に乗客が増えて仙台に14時04分に着いた。横浜を出てからすでに8時間半も経ち、新幹線に乗りたくなってきた。

仙台駅
仙台

 この先、盛岡までは各駅停車で行ったことがあるので、もう少し進んで一ノ関から新幹線に乗ろうか、我慢して北上線で横手へ出ようかと迷っていたが、北上線も強風の影響があるようなので、安全牌で一ノ関発17時14分の「やまびこ」に乗ることに決めた。
 当初、新潟経由で秋田へ向かう予定を立てていて、乗り継ぎの関係で買っておいた新発田から村上までの乗車券と特急券を変更しに、仙台駅のみどりの窓口に行くと25人待ちであった。
 こんなところで待っていたら夜になってしまうので先へ進むことにする。乗るのは仙台発14時34分の小牛田行きだが、その前に石巻行きがある。これに乗って2つ先の岩切駅できっぷを変更してもらう。

 小牛田発15時35分の一ノ関行きの電車は強風の影響で遅れてやってきた。小牛田から2つ先の瀬峰まで徐行するという。
 確かに、風を遮るものがなく、田んぼが広がるだけの吹きさらしである。この辺りはササニシキの産地で、秋には一面が黄金色に染まるのだろうが、今は湿地帯が広がるばかりだ。11分で走破する区間を40分くらいかかった。
 時速20km程度でとんでもなくゆっくり走ったので、新幹線に乗り遅れるのではないかと気を揉んだが、瀬峰からは人が変わったように時速100kmくらいでの運転となった。ちょっと極端すぎるが速いのはありがたい。

一ノ関から秋田へ

 17時前に一ノ関に着いて高架の新幹線のホームに上がると、大船渡線のディーゼルカーの上空に雲間から夕日が差し、私の心もようやく晴れてきた。
 一ノ関から秋田までは乗車券と特急券を合わせて7850円である。北海道&東日本パスでは特急には乗れないので、別途、乗車券と特急券を買わなければならない。

一ノ関駅・新幹線ホームからの眺め
一ノ関

 やまびこに乗って夕暮れの車窓を見ながら40分、盛岡に17時54分に着くと日没をすぎて真っ暗だ。ここで18時35分発の秋田新幹線「こまち」に乗り継ぐ。乗り継ぎの特急券で改札を出ることができないので、暖房の入ったホームの待合室で待つ。
 こまちに乗るのは初めてなので、ちょっとワクワクする。颯爽とホームに滑り込んできた赤い車両に乗り込む。
 ここまでほとんど雪を見なかったが、田沢湖、角館、大曲に停車するとかなりの積雪があり、ホームの灯かりに照らされている。
 新幹線は速くて楽だなと改めて思いながら、20時12分に秋田に着いた。秋田駅は海に近いためか、角館や大曲ほどの積雪はなく、歩くのに支障はない。結局、ここまで何も食べずに来てしまった。たまには一日くらい断食もよいだろう。

秋田駅・こまち
秋田

 明日は男鹿に立ち寄り、八郎潟や大館などで途中下車しながら、奥羽本線で弘前まで行くことにしている。
 (つづく)



 鈍行みちのくひとり旅
 【1日目】北海道&東日本パスで東京から盛岡、秋田へ
 【2日目】なまはげとハチ公と弘前城
 【3日目】はるばる来たぜ函館へ
 【4日目】函館からフェリーで大間へ
 【5日目】三陸鉄道・吉里吉里の砂浜とカキフライ
 【6日目】奥羽本線・峠駅の力餅で英気を養う