ローカル鉄道の時間旅行
杉森涼
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鈍行みちのくひとり旅
(6日目)
峠駅の力餅で英気を養う


 北海道&東日本パスの旅・6日目。昨日は盛岡を出て三陸海岸を散策、釜石から花巻、福島まで普通列車を乗り継いだ。
 最終日は奥羽本線の峠駅で力餅を食べ、糖分と鉄分を補給、英気を養って東京へ帰ることにする。

奥羽本線・峠駅の力餅
峠の力餅

福島から峠へ

 2025年3月3日 月曜日。
 ホテルを出ると、傘をさすほどではないが、雨がポツポツと降っている。
 この旅の最終日になって初めて天気が悪いが、峠駅は雪が降っているほうが風情があると思う。
 福島発7時14分の米沢行きに乗る。車内は地元の人がちらほら乗っている程度で閑散としている。
 発車してしばらくすると、車掌さんが検札をはじめた。普通列車で検札を受けるのはかなり久しぶりの気がする。
 福島駅から峠駅などへ、乗車券を買わずに行ったり来たりする人がいるのだろう。
 福島を出て2つ目の庭坂をすぎると住宅地から田園風景に変わり、電車は右へ大きくカーブしながら登っていく。
 この辺りからは福島市街の眺めがよいらしいが、雨が降っているので遠望は利かない。
 さらに左へ大きくカーブしながら登ると、阿武隈川の支流である松川が沿うようになる。
 蛇行する松川の流れが線路沿いに近づくとトンネルに入る、それを繰り返しながら登っていく。
 徐々に険しくなって渓谷から峡谷へ、雨から雪景色へと変わり、かなりの高さの松川橋梁を渡る。
 下り線が昭和35年から使われている三代目の松川橋梁、上り線のが昭和42年からの四代目らしい。
 一瞬で通りすぎたが、橋桁だけが紅一点の水墨画のような雪景色であった。

奥羽本線・松川橋梁
松川橋梁

 松川橋梁を渡るとすぐ赤岩駅だが、2021年に廃止されたのでもちろん通過する。と言うか真っ白でよく分からなかった。
 この先は赤岩、板谷、峠、大沢と、かつてスイッチバック駅が4連続していた区間である。
 標高330mの赤岩からも急勾配を登っていき、やがて福島県から山形県に入るが、登りは続く。
 山上の集落に入り、スノーシェルター内の板谷駅も通過。板谷と大沢は、冬季は全列車が通過となっている。
 積雪による列車の大幅な遅延や誤って降車してしまうリスクを避けるためだという。
 私も、一日一往復しか運行がない北海道の札沼線から下車したとき、吹雪になって酷い目にあったことがある。
 7時43分、板谷から数分で巨大なスノーシェルター内の峠駅に着いた。下車したのは私一人だ。

奥羽本線・峠駅
峠駅に着いた

 峠駅は奥羽本線で最も標高が高い622m。福島駅の標高が71mだから標高差約550mを登ってきたことになる。
 福島駅〜米沢駅間が開業したのは1899年(明治32年)と知ると歴史を感じずにはいられない。
 8時26分発の福島行きで戻るので、峠駅を散策できる時間は45分ほどである。
 その間に「山形新幹線つばさ」の上りと下りが一本ずつ通過することになっているので、それを見ようと思う。
 電灯がともる薄暗い巨大な工場のようなシェルター内を見学する。

峠駅・米沢方面の眺め
峠駅・米沢方面

 スノーシェルターはポイント(分岐器)を積雪から守るための建物で、ホームから米沢方面を見ると2つに分かれている。右が本線で左がかつての峠駅への引込線である。
 逆に福島方面を見ると、こちらも本線から左へ、引込線の跡が残っている。
 かつての普通列車は、福島からここまで登ってきて本線から分かれて峠駅に停車、後ろ向きに走り出して本線を斜めに横切り引込線に入って停車、前向きに走り出して本線へ戻り、米沢へと向かっていた。
 なので、4つのスイッチバック駅を通過する特急よりも、普通列車は2倍の時間を要していたという。
 しばらくすると上りのつばさがやってきた。下りのつばさは10分後くらいに来るので、それまで駅前に出てみる。

峠駅・山形新幹線つばさ
山形新幹線つばさ

 外に出ると引っ切り無しに雪が降り続き、シェルターは雪に埋もれている。こんな風景をあまり見たことがないので新鮮な気持ちになる。
 シェルターに沿って靴が雪に埋まりながら歩いて行くと、峠の茶屋がひっそりと建っている。積雪は2mくらいありそうだ。
 この辺りにかつての峠駅のホームがあったのだろうか、積雪でまったく分からなかった。

奥羽本線・峠の茶屋
峠の茶屋

 下りのつばさが来る時間なので、雪道を歩いて戻る。シェルター内は暗く、腕もないので写真は予想通りブレた。
 再び、ホームを散策し、気がつくとホームを端に人が立っているので、近づいていくと「峠の力餅」売り子さんだった。
 1箱8個入り1000円を買う。まったく愛想がなく、売れなくても構わないような感じだった。まあ、こんな時間に買う人もいないだろうから仕方がない。
 上りの電車がやってきたので乗り込む。売り子さんの声は一切聞こえなかった。

峠駅・福島行きの列車
福島行きの列車

峠から福島、東京へ

 車内は福島市街へ通学していらしい高校生で賑やかだ。山を下っていくと雪から雨に変わり、8時53分に福島に着いた。
 北海道&東日本パスの旅なので、普通列車を乗り継いで東京まで行きたいのだが、仕事が溜まっているので新幹線で帰ることにする。
 自動券売機で乗車券と特急券(9110円)を買う。9時10分発のやまびこに乗り、アンコロ餅が8個入った峠の力餅を食べながら流れていく車窓を見る。

奥羽本線・峠の力餅
峠の力餅

 福島駅では雨だったが、郡山の辺りでは雪に変わった。10時48分東京着。
 今回は、オホーツク海へ流氷を見に行く予定だったのだが、暖冬で急遽、東北を回る旅に変更したので、来年の冬こそは流氷を見たい。



 鈍行みちのくひとり旅
 【1日目】北海道&東日本パスで東京から盛岡、秋田へ
 【2日目】なまはげとハチ公と弘前城
 【3日目】はるばる来たぜ函館へ
 【4日目】函館からフェリーで大間へ
 【5日目】三陸鉄道・吉里吉里の砂浜とカキフライ
 【6日目】奥羽本線・峠駅の力餅で英気を養う