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鈍行みちのくひとり旅 (5日目) 三陸鉄道・吉里吉里の砂浜とカキフライ
北海道&東日本パスの旅・5日目。昨日は函館からフェリーで大間へ渡り、路線バスと大湊線で下北半島を南下、雪が残る野辺地から盛岡まで普通列車を乗り継いだ。
今日は宮古へ出て三陸海岸を散策、釜石線と東北本線を乗り継いで福島まで行く予定にしている。
盛岡から宮古へ
2025年3月2日 日曜日。
6時にホテルを出て、盛岡駅へ10分ほど歩く。まだ日の出前だが、明るくなってきた。雲が多いが、天気予報では晴れて気温も上がると言っていた。
盛岡駅に着いて山田線のホームに降りると、6時32分発の宮古行きはすでに入線している。日曜日なのでそれなりに観光客がいるかと思ったが、各ボックスに地元の人が一人ずつ乗っている程度である。
 盛岡
発車すると北上川を渡って東へ向かう。2つ目の山岸をすぎると市街地が尽きて山に入る。しばらく米内川に沿って走ると上米内で、集落があり田園風景が広がっている。ここから北へ行くと高台に大きな住宅地があるようだ。
上米内を出ると人跡稀な山岳地帯へと入って行く。米内川の左岸へ、右岸へと渡りながら遡って行くと、だんだんと山深くなって雪も深くなってくる。線路に細い県道も沿っているが、車はまったく通らない。
上米内駅の次の区界駅までは約30km、途中に秘境駅として知られた大志田駅と浅岸駅があったが、2016年に廃止されている。
地図をみるとS字の箇所がある。180度向きを変えること2回、急勾配を登ったところが大志田駅跡で、標高290mとなっている。
盛岡駅から160mほど登ってきた訳だが、区界駅は標高744m、東北地方で最も標高の高い駅なので、まだ山田線の序章が終わったにすぎないようだ。
大志田駅跡をすぎると米内川と分かれてトンネルに入る。勾配が増してディーゼルエンジンの音も大きくなってきた。トンネルを出ると中津川に沿うようになって浅岸駅跡をすぎる。
ここまで寄り添っていた県道も離れていくと、何もない雪景色の渓谷で、水墨画の中を走っているようだ。
長いトンネルをくぐると、視界が開けて国道に出る。宮古市に入ると、7時22分に区界に着いた。1日平均乗車人員は1人だという。
小さな駅舎があり、ホームでは何人か写真を撮っている。区界には住宅が点在し、道の駅やキャンプ場などがあるようだ。
 区界
区界を出ると水系が変わり、終着の宮古まだ閉伊川に沿って下っていく。国道106号線もずっと寄り添っているので、これまでのような秘境ではない。
車窓からは見えないが、5〜6kmほど南に標高1917mの早池峰山が聳えている。同じ日本百名山の岩手山には登ったことがあるので、いつか遠野物語の観光と合わせて早池峰山にも登ってみたい。
大きく蛇行を繰り返す閉伊川を幾度となく鉄橋で渡る。川幅も徐々に広がって、緩やかに下って行く。エンジン音も穏やかなので、ウトウト眠くなってくる。
8時37分に茂市に着く。山田線の主要駅の一つなので、それなりの街が広がっているのかと思っていたが、小さな集落があるだけで閑散としている。ここから分岐していた岩泉線は、2014年に廃線になっている。
ごく小さな駅舎に建て替えられ、跨線橋も撤去され、駅構内の広さが昔の面影を残しているだけで、廃線になる日を待っているようにも思えてくる。
立派な川になった閉伊川といっしょに緩やかに下って、9時01分に終着の宮古に着いた。
 宮古
宮古からは三陸鉄道に乗って釜石へ向かう。おもしろい名前で以前から気になっていた吉里吉里(きりきり)で途中下車することにしている。
発車までまだ1時間ほどあるので、駅付近を歩いてみようと思う。浄土ヶ浜までは5kmなので、またの機会にしよう。
地図を見ると、駅のすぐ西側に出逢い橋というのがある。橋の上から宮古駅の構内を見渡すと、山田線と三陸鉄道の車両が見える。2つの路線が出逢うという意味だろうか?
線路を跨ぐ出逢い橋ができたのは1994年で、それまでは「女学校踏切」で線路を渡っていたという。近くにある宮古高校は、元はこの辺りで唯一の女子中等教育を担う学校だったというから、女学生と出逢えるという意味なのかも知れない。
出逢い橋の先の閉伊川まで往復、宮古駅に戻って改札を通ると、ちょうど列車が入ってきた。乗ろうとするとこれは久慈へ折り返す列車で、釜石行きは同じ1番線の海寄りに停車していた。
 三陸鉄道
宮古から吉里吉里、釜石へ
9時56分に発車して、リアス式海岸の宮古湾を南へ向かうが海は見えない。また、見えそうな箇所は堤防になっている。
宮古湾の入り江をすぎると、本州最東端の地・とどヶ崎がある半島の基部を横切り、再び入り江に出ると主要駅の陸中山田に着く。
山田線の線名になった駅である。宮古から釜石の区間は山田線であったが、東日本大震災で大きな被害を受けて不通となり、2019年に三陸鉄道に移管されて復旧した経緯がある。
山田線のままであれば北海道&東日本パスで乗れて、余計な出費がなくて済んだのだが、北リアス線と南リアス線がつながって、盛から久慈までの三陸縦貫線になったのはよいことだと思う。
ここで何人か下車したので、海側の席に座り直す。陸中山田をすぎると海が見えるようになってきて、10時57分に吉里吉里に着いた。吉高由里子さんが連想される。
駅名標には「鳴き砂の浜」と書かれている。吉里吉里とは、下駄を履いて砂浜を歩くと、きりきりと音がしたのが由来だという。駅は高台にあるのだが、この辺りまで津波が到達したらしい。
次の列車は2時間半後なので、その鳴き砂の浜をゆっくり散策して、海の幸を食べようと思っているのだが、店は少なく営業しているかどうかも分からない。駅前の店は閉まっていた。
 吉里吉里
まずは、徒歩10分の吉里吉里海岸へ行ってみる。駅から坂を下って国道45号線を北へ歩いていくと、青い海が見えてきた。
吉里吉里海岸は白く綺麗な砂浜なのだが、振り返ると大きな堤防に囲まれている。三陸の海はとても穏やかなのに異様な雰囲気である。
しばらく砂浜で佇んでいると、正午になって楽しい音楽が街に響き渡る。聞き覚えのある曲で、すぐに「ひょっこりひょうたん島」と分かった。
ここからは見えないが、蓬莱島がひょっこりひょうたん島のモデルだという。原作者の井上ひさし氏には、架空の独立国家を題材にした吉里吉里人という著書もある。
 吉里吉里海岸
お腹が減ったので食事へ向かうが、このあたりに店は一軒しかない。行ってみると営業していてホッとする。休みならセブンイレブンの弁当になるところであった。
街にはほとんど人はいなかったが、店に入ると宴会が行われていて、少し時間がかかるという。
三陸の刺身を食べようと思っていたが、今日のおすすめはミックスフライ定食と言うので、それを注文する。ご主人が漁師さんで、奥さんと2人でやっているそうだ。
30分ほどしてようやく定食が運ばれてきた。海老と鯵と牡蠣のフライはどれも大きく新鮮であった。列車の時間が迫り、急いで食べたので、牡蠣フライで口の中を火傷した。
吉里吉里駅に戻ると、13時29分発の列車がやってきた。三陸鉄道のイメージである青と赤のカラーリングだ。
ラグビーW杯が行われた釜石鵜住居復興スタジアムを見ると、13時53分に鉄の町である釜石に着いた。
駅舎にはラグビーボールのオブジェが展示してある。日本のラグビーにおいて、新日鉄釜石の後は神戸製鋼だったが、ラグビーと鉄は何か関係があるのだろうか。
 釜石
釜石から花巻、福島へ
駅前を少し歩いて、14時18分発の「快速はまゆり」で花巻へ向かう。3両編成で最後尾が指定席になっている。
日曜の午後ということで混むのではないかと思い、指定席を取っておいたのだが、自由席も空いていてた。
釜石線のみどころは、陸中大橋のヘアピンカーブである。列車は洞泉駅を通過すると北へ向きを変え、左窓に集中していると上方に赤いトラス橋が見える。
陸中大橋駅を通過するとトンネルに入り、ヘアピンカーブを左へ左へを曲がりながら登っていく。トンネルを出ると南向きに走っていて、数分前に見た赤いトラス橋の上から陸中大橋駅付近の線路が見えた。
 陸中大橋付近
長い土倉トンネルを抜けて、滝観洞(ろうかんどう)という鍾乳洞がある上有住を通過すると、早瀬川に沿って緩やかに下っていく。山岳地帯から長閑な田園風景に変わり、眠くなってくる。
15時09分に遠野に着くと乗り降りがあり、早瀬川が合流した猿ヶ石川に沿うそうになる。この下流にダム湖の田瀬湖があるようだ。
西日を浴びながらウトウトしていると、田園風景の中に異様な高架が見えて新花巻に着いた。今夜宿泊する福島まで新幹線に乗ってしまおうかとも考えていたが、それほど疲れていないので乗り続けることにする。
新花巻から8分で東北本線の花巻に着いた。大谷翔平選手や菊池雄星投手の出身校である花巻東高校は駅の北西にあるらしい。
 花巻
花巻からは5本の普通電車を乗り継いで、福島に着くのは約5時間後である。何とか耐えなければならないので、改札を出て外の新鮮な空気を吸う。
16時33分に花巻を出発。この先はずっと通勤型のロングシートで旅情はない。17時26分に一ノ関に着くと明かりが灯りはじめ、駅前は日本酒やビール、居酒屋、ホルモンの看板だらけで、飲みたくなってくる。
一ノ関を出ると日が暮れて、外は見えなくなった。小牛田で乗り継ぎ、仙台着19時21分。9分後の白石行きに乗り換える。東北第一の都市だが意外と乗客が少ない。
白石では30分の待ち時間があるが、駅前には何もない。人の姿もなく、駅舎の光だけが眩しかった。
 白石
20時49分に今日乗る最後の電車が発車。寂しい県境を越えて福島着21時23分。日曜日の夜で静かな街を歩いてホテルへ向かう。
明日は奥羽本線の峠駅を見てから東京へ帰ることにしている。
(つづく)
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