ローカル鉄道の時間旅行
杉森涼
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函館本線の秘境駅探訪


 7日間有効の北海道フリーパスを利用して根室、網走、稚内などをぐるっと回ってきた。期限の昨日は旭川から函館まで、特急を乗り継いでやってきた。
 今日は函館本線の秘境駅を散策した後に五稜郭へ戻り、いさりび鉄道に乗って渡島当別の修道院へ行くつもりである。
 この旅の初日に来春に廃止される桂川駅を探訪し、旅の終わりに姫川駅と東山駅を散策する。

快晴の函館山へ登る

 2016年11月14日。
 朝、起きると雲ひとつない快晴で、澄んだ青空が広がっている。こんなに良い天気にはなかなか恵まれないので、まずは函館山へ登って景色を楽しもうと思う。
 6時45分頃に函館駅近くのホテルをチェックアウトして、十字街へ歩いて行く。市電は走ってはいるが、まだ本数が疎らで歩いた方が早そうだ。

函館市電と函館山
函館市電と函館山

 7時15分に登山口に着き、旧登山道コースを登っていく。昔の車道という道なので、幅が広く緩やかで歩きやすい。
 淡々と登って、7時50分に標高334mの山頂に着いた。展望台には人影がなく、百万ドルの夜景でおなじみの風景、眼下には教会群があり、遠くには五稜郭タワーや渡島駒ヶ岳がすっきりと見えている。

函館山からの眺め
函館山からの眺め

 列車の時間まで余裕があるので、しばらくは要塞跡などを見て回る。絶景を堪能し、旧登山道コースを下って、10時頃に函館駅に戻ってきた。

函館から姫川へ

 私が乗る森行きの普通列車は10時53分発、まだ時間があるので青函連絡船の摩周丸を見たり、朝市をぶらついて朝食と昼食を兼ねた海鮮丼を食べた。
 時間になったので駅へ戻ると、森行きの普通列車はすでに入線している。二両編成だが乗客は数人しかいない。新幹線に乗り継ぐ人は接続のよい「はこだてライナー」に乗るのだろう。

函館駅
函館駅

 新幹線の新函館北斗をすぎると仁山に着く。無人駅だがいい駅舎だなと思う。ここはニヤマ高原への最寄り駅で、函館湾から大沼公園まで見渡せるというので、一度行ってみたいところだ。
 しばらく山の中を走ると視界が開けて小沼の畔に出た。左窓には渡島駒ヶ岳が長い裾を広げている。左へカーブしてセバットと呼ばれる小沼と大沼の間を通り抜けると、大沼と駒ヶ岳が右窓に見えるようになる。

小沼と渡島駒ヶ岳の車窓
小沼と駒ヶ岳の車窓

 やがて畑や牧草地の風景に変わって駒ヶ岳の裾を右へ左へカーブしながら登っていくと東山で、山の中に片面に板張りのホームがあるだけの簡素な駅である。
 東山から5分ほど山中を走ると12時12分に姫川に着いた。1913年(大正2年)に信号場として開設されたので上下のすれ違いができるように2線あり、ホームも2面ある。
 列車が山中に消えるのを見送り、駒ヶ岳が見える線路を渡って上りホームにある駅舎へ向かう。建物は1991年に改築されたという。駅舎内は奇麗に掃除されているが、4つあるベンチのシートは破れていた。

函館本線・姫川駅
姫川駅

姫川駅から東山駅へ歩くへ

 ここからは東山駅までの4.1kmを散策しながら歩くことにする。下りホームのすぐ近くを国道が通っているが、そちらへ行く道がないので、駅舎側の未舗装路を森の中へ入って行く。
 数分歩くと数軒ほどの集落が現れ、はちみつと書かれた看板がある。倉庫のような建物がいくつかあるので養蜂場なのだろうか。すぐ先で舗装路に突き当たり、右の東山方面へ歩いて行くと尾白内川を渡る。地図を見ると内浦湾に注いでいるようだ。
 駒ヶ岳を眺めながら坂道を上がると笹川大晃牧場が広がっていて、競走馬が一頭のみ放牧されており、一心不乱に草を食べていた。

笹川大晃牧場
笹川大晃牧場

 踏切を渡るとしばらくは国道5号線(大沼国道)を歩いていく。だだっ広いところに通った道なので北海道らしい感じだ。バス停の時刻表を見ると函館行きのバスが1日5本ある。
 国道を15分ほど歩くと久しぶりの信号が現れて東山駅への道に入る。5分ほど歩くと無名の小さな神社があり、その先が東山駅前の踏切で、スーパー北斗が通過していった。
 線路との間を鉄パイプを組んだ柵で区切られている簡易的な歩道を歩いて行くと姫川駅から約40分、東山駅に着いた。辺りにはなにもない板張りホームの秘境駅である。

函館本線・東山駅
東山駅

 東山も姫川と同じ年に信号場として開設され、当時は脇の築堤を本線が通っており、信号場はスイッチバックになっていたという。
 ホームの時刻表を見ると1日に上りが5本、下りが4本あるが、姫川よりもそれぞれ1本ずつ少ない。ここを通過する普通列車があるようだ。
 この駅は大沼から列車に乗って来ると、駒ヶ岳が右後方にすぎた位置にあるのだが、線路が曲がりくねっているので、これから進む森方面に駒ヶ岳が見えるのが面白い。

函館本線・東山駅
東山駅と駒ヶ岳

東山から姫川へ

 ここからは駒ヶ岳駅へ歩こうと思っていたのだが、あと30分ほど待てば森行きの列車がある。せっかくなので、その13時33分発の列車に乗って姫川へ戻ることにした。
 しばらく待つとカーブから一両の列車が姿を現し、20パーミルの勾配を下りながらやってきた。運転士の隣に鉄道ファンが一人乗っているのが見える。列車に乗ると乗客はその一人だけであった。

函館本線・東山駅に向かってくる列車
東山駅に向かってくる列車

 姫川に13時40分に着くと、構内の踏切が鳴りっぱなしで開く気配がない。乗ってきた列車も待機したままである。ホームには私一人がポツンと取り残された。10分ほど待つと函館行きのスーパー北斗が現れて、ようやくすれ違いが終わった。

姫川から五稜郭へ

 20分ほど待って、14時08分発の列車で五稜郭まで行く。

函館本線・姫川駅
姫川駅

 少し日が陰ってきたが、この後は五稜郭から道南いさりび鉄道に乗って、渡島当別の修道院を見学することにしている。
 (つづく)

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