ローカル鉄道の時間旅行
杉森涼
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北海道新幹線と漁港の秘境駅


北海道新幹線が開業

 まとまった休みが取れたので、今年は北海道フリーパスを使って旅をしてみる。
 北海道フリーパスは、JR北海道の普通車自由席に7日間乗り降り自由で、特急の指定席も6回まで利用できるおトクなきっぷだ。
 2年前に北斗星に乗って以来、秋になると北海道へ行きたくなっている。本当は梅雨のない爽やかな6月頃に行きたいのだが、仕事の関係でどうしても秋になってしまう。
 北海道フリーパスを使うからには、できるだけ遠くまで行かなければ損である。大まかに、こんな予定を考えた。

 1日目・・・東京から新幹線で函館へ、在来線に乗り継ぎ苫小牧で宿泊。
 2日目・・・北海道フリーパスを使い始め、夕張を散策して釧路へ。
 3日目・・・花咲線で納沙布岬へ、この日も釧路で宿泊。
 4日目・・・釧網本線と石北本線を乗り継いで旭川へ。
 5日目・・・留萌を散策、この日も旭川で宿泊。
 6日目・・・宗谷本線で稚内、宗谷岬へ。
 7日目・・・宗谷本線を途中下車しながら旭川に戻る。
 8日目・・・旭川から函館へ。北海道フリーパスの期限が終了。
 9日目・・・函館、渡島当別を散策。
 10日目・・・新幹線で東京へ。

 2016年3月、北海道新幹線が開業した。
 出発の数日前にみどりの窓口へ行き、東京から苫小牧までの乗車券と特急券、北海道フリーパスを買う。駅員さんは北海道フリーパスをご存じでなく、買うのに少し手間取ったが、これで準備はできた。

東京駅・新幹線はやぶさ
東京駅

東京から新函館北斗へ

 2016年11月6日。
 1日目、東京6時32分発の「はやぶさ1号」に乗る。私は青函連絡船の世代ではないがそれでも、いよいよ新幹線で北海道へ行ける日が来たんだなと思う。
 はやぶさ1号は大宮、仙台、盛岡に停車、左窓を見ると岩手山が雪で白くなっている。
 新青森を出て奥津軽いまべつをすぎると、初めて新幹線で青函トンネルを抜けて、新函館北斗には10時58分に着いた。東京から函館まで4時間半とは、なんて便利になったのだろう。
 新函館北斗は、新幹線の開業前は渡島大野という名前の駅であった。
 乗り継ぎに時間があるので駅周辺を散策すると、南口は整備されてビルがいくつか建っているが、北口はロータリーができただけで畑が広がっている。時代の流れの速さについていけていない感じだ。

旧渡島大野の新函館北斗駅
新函館北斗駅

新函館北斗から いかめしの森へ

 在来線のホームに下りて、11時19分発の森行き普通列車に乗る。車内はけっこう混んでいたが、ほとんどの人が観光地の大沼公園で下車、車内は私一人の貸し切りとなった。
 紅葉はすでにピークをすぎて茶色くなっており、駒ヶ岳の山頂は雲で覆われている。
 この旅の終盤で訪れる予定の秘境駅である東山、姫川を車窓から眺めて、森に12時18分着。
 森で下車すると気温が2℃、どんよりした天気で今にも雪が降ってきそうだ。

函館本線・森駅
森駅

 今日はこれから来春廃止される桂川駅を散策、列車を乗り継いで苫小牧に宿泊することにしている。
 駅前の商店で名物の「いかめし」を買っていく。昔よりもだいぶ値上がりしたようで、手の平サイズの小さな駅弁が650円になっていた。
 桂川は森の次の駅で、噴火湾沿いを北西へ3kmほど行ったところにあり、そこまで歩いて13時48分発の長万部行きの列車に乗ろうと思う。

森から秘境駅の桂川まで歩く

 右に線路と噴火湾を見ながら北海道道を歩く。時間があるので鳥崎稲荷神社を散策していると「スーパー北斗」が駒ヶ岳を背に走り抜けていく。
 踏切を渡って鷲ノ木漁港に下ると、左側の高みが桂川駅であった。

函館本線・桂川駅
桂川駅

 駅前・・・と言っていいのか、そこは漁港の道具置場のようになっていて、大量のブイや漁網、魚を入れるプラスチック製の大きな箱などが山積みになっている。到底、駅とは思えない。
 5mほどの高みにあるホームへ続くトタンで覆われた階段の途中が小さな待合室になっているのだが、雨が吹き込むのか雨漏りなのか、ベンチの上には水が溜まっている。
 ところどころ屋根や壁のトタンに穴が開いていて、来春の廃止までこのままなのだろう。
 駅への入口に危険と書かれた赤い看板があり、列車に注意するようにということなのだが、ホームへ続くこの階段が壊れそうで危険な感じだ。

函館本線・桂川駅の入口
桂川駅の入口

 北海道新幹線が開業して、函館から木古内への江差線は、それなりに乗客がいるので第三セクターの道南いさりび鉄道として再出発したが、新幹線が札幌まで延伸すればこの辺りの函館本線はどうなるのだろうか。
 大沼公園から長万部の区間は普通列車の乗客はほとんどいない。ただ、函館から室蘭や苫小牧へ特急を利用する人は多く貨物列車も走っているので、おそらく第三セクターになるのだろう。JR北海道の路線として残すとは考えにくい。
 もし現在のスーパー北斗のような特急がなくなってしまうと、函館から室蘭へは新函館北斗で新幹線に乗り換え、長万部で再び在来線に乗り換えるという面倒なことになってしまうのだが・・・。

函館本線・桂川駅と渡島駒ヶ岳
桂川駅と渡島駒ヶ岳

 さて、桂川駅の待合室から階段を上がると左が森方面、構内踏切を渡った右奥が長万部方面へのホームで、その先にはトンネルが見える。しばらく散策していると、靄が少し晴れて駒ヶ岳の山頂が見えるようになった。
列車が来る時間になって踏切の音が鳴り始めると、漁師の息子といった感じの高校生くらいの少年が、遮断機をくぐってホームに上がってきた。この先の町である八雲まで行くらしい。

桂川から長万部、苫小牧へ

 13時48分発の列車がやってきて乗り込む。車内はがら空きで閑散としている。

桂川から長万部行きに乗る
長万部行きの列車

 森で買ったいかめしを食べながら、のんびりと噴火湾の車窓を眺め、14時59分長万部に到着。線路には薄っすらと雪が積もっている。
 駅前を散策していると、「まんべくん」というゆるキャラがおしゃまんべ温泉郷の紹介をした看板が立っている。何だかよく分からないが、町の特産であるカニとホタテ、町の花であるアヤメを組み合わせたキャラクターだという。
 雲間から西日が差しているが、徐々に暗くなってきた。北海道の秋の日暮れは早い。

長万部駅
長万部駅

 15時22分発の「北斗13号」札幌行きに乗車。特急もそれほど混んではなく、自由席も窓側が空いていた。
 洞爺をすぎると雪で白くなった有珠山が見える。
 東室蘭の辺りで日没となり、苫小牧に16時51分着。予約しておいた駅前のホテルに宿泊する。
 明日から北海道フリーパスを使い始める。明日は夕張を散策してから釧路へ向かう予定である。
 (つづく)

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