宗谷本線の秘境駅探訪A (智恵文・智北・南美深)
上幌延から智恵文へ
午前中は宗谷本線の秘境駅である安牛、南幌延、上幌延を探訪してきた。午後は上幌延から2時間、上りの普通列車に揺られ、北星で下車して美深駅まで歩くつもりである。
上幌延発12時09分発の列車が定刻でやってきた。もちろん1両で、乗客は10人ほどで空いている。
上幌延駅
先ほど歩いた南幌延、安牛をすぎて雄信内に着くと、遅れていた稚内行きのスーパー宗谷が停車している。
車窓から糠南、歌内、咲来(さっくる)、紋穂内(もんぽない)など秘境駅の写真を撮ったりして、美深まで来ると積雪が多くなってきた。
糠南駅の車窓
4つ先の北星から美深までの9kmを歩いて戻り、16時11分発の特急に乗って旭川へと思っていたが、積雪が多く2時間で歩くのは無理である。それで北星より一つ手前の智恵文(ちえぶん)から美深までの7kmに急遽変更にした。
14時9分に智恵文駅に着いて列車を見送る。鉄道で鉄分補給とはよく言うけど、智恵文で知恵を補給・・・。頭がよくなりそうな名前だが、智恵文とはアイヌ語でチエブント、魚が入る沼という意味だそうで、近くに三日月湖の智恵文沼がある。
智恵文駅
智恵文駅から南美深駅へ歩く
智恵文の駅前はどんなところかと思ったが、集落があり郵便局や小さな神社もあった。有名な秘境駅の北星はここから線路沿いの道を南へ2km行ったところである。
智恵文からは線路と離れないように道道252号線を歩いていく。左側に天塩川の三日月湖という智恵文沼が見えるはずだが積雪で形が分からない。「ひぶなの里 ちえぶん沼パーク」と書かれた看板や駐車場もあるので、この辺りでは観光名所なのだろう。
雲間から光が差し込んで、少しだけ幻想的な風景になっている。正面の山並みに向って歩いていくと智北駅に着いた。
智北駅
智北は片面ホームの簡易的な駅で、工事現場にあるような小さなプレハブが待合室で、屋根には20cmほどの雪が積もっている。
智北をすぎると右の土手に線路、左には広大な牧草地が広がっていて、遠くにいくつか倉庫が建っている。そこから柴犬が飛び出してこちらへ走ってきた。番犬なのだろう。
途中で立ち止まって、ずっとこちらを眺めている。柴犬の柴田くんなのか、柴咲さんなのか分からないが、見送ってくれたようであった。
雪原の柴犬
すぐ先で高架の名寄美深道路をくぐると、右の高みを下りの稚内行きの普通列車が通り過ぎていく。
仁宇布(にうぷ)川を渡ると名寄市から美深町に入り、15時5分に南美深駅に着いた。
南美深駅
仮乗降場のような板張りホームの傍らに、南美深待合所と書かれたブロックを積んでつくった建物がある。と思って近づくと、薄緑色の鉄板がはってある木造の納屋のような小屋で、木の引戸を開けて中に入ると先客がいた。智恵文まで同じ列車に乗っていた人であった。
この人は北星まで行って、さっき通り過ぎた下り列車で南美深に戻って来たそうだ。私もそうすれば北星へ行けたんだなと思った。明日はレンタカーで秘境駅めぐりをするらしい。
南美深駅
南美深駅から美深駅へ歩く
ここからは線路沿いに道がないので、西へ500mほどのところを通っている国道40号(名寄国道)まで出て北へ歩く。国道は片側二車線だが両側に幅の広い路側と歩道があり、ずっと一直線で見通しがよい。西側には防雪柵が連なっている。周辺は原野のような感じなので風が強いのだろう。
そろそろ列車が通る時間なので東側の牧草地を見ながら歩いていると、稚内行きの特急サロベツが走り抜けてゆく。
特急サロベツ
やがて美深の中心街に入ると久しぶりに信号機を見た。トロッコ王国まで21km、松山湿原まで29kmなど、観光の標識もある。トロッコ王国は美幸線の廃線跡を利用した施設だという。
細かい碁盤の目になった町を1kmほど歩くと、15時55分に美深駅に着いた。駅舎の美深交通ターミナルは、赤レンガ造りの二階建てで時計塔があり、観光案内所や美幸線記念館などが入っている。
美深駅
窓口で明日の指定席を取ろうと思ったが、みどりの窓口ではないので取り扱いがなかった。
跨線橋を渡って上りホームに降りると、十三夜くらいの月が夕暮れの空に輝いている。やがて16時11発の特急サロベツ札幌行きがヘッドライトを光らせてホームに入ってきた。
美深駅・特急サロベツ
釧路で取っておいた指定席に乗り、1時間半ほど揺られて、旭川に17時33分着。今夜は旭川に泊まり、明朝に函館へ向かうことにしている。
(つづく)
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