ローカル鉄道の時間旅行
杉森涼
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釧網本線と釧路湿原


 昨日は東の最果て納沙布岬を訪れた。次は北の最果て宗谷岬を目指す。
 今日は釧網本線で網走へ、石北本線に乗り継いで旭川まで行って宿泊する。
 時間的に余裕があるので、オホーツク海に一番近い駅である北浜と、もう一ヶ所くらい途中下車してみたい。

 2016年11月。
 今日は北海道フリーパスを使い始めて3日目である。
 釧路を6時02分に発車する釧網本線の網走行き普通列車に乗るが、その前に幣舞橋まで行ってみようと思う。
 夜明け前の街灯がともる一直線の道路を南東へ1kmほど歩くと幣舞橋で、橋の欄干には四季をイメージしたという乙女のブロンズ像が並んでいる。川の両岸に並んだ街灯によってライトアップされているかのようで綺麗であった。
 駅へ向かって歩き出すと、白々と夜が明けてきた。
 釧路駅の2番線のホームに上がると、列車が1両で入線しているが、発車10分前なのに乗客は数人だけだ。私は釧路湿原の車窓を楽しみたいので、左側の席に座る。

釧路駅
釧路駅

 いつもこんなに空いているのかと思っていると、発車間際になって高校生がどっと乗ってきて、ほぼ席が埋まった。私の隣には女子高生が座り、どこまで通っているのか尋ねると標茶高校だという。
 どうやらこの車両に乗っている高校生は全員、標茶へ通学しているらしい。釧路にはたくさんの高校があるのに、なぜ標茶なのだろうか。
 6時2分に発車、次の東釧路で根室へ向かう花咲線と分かれると、こちらは北へと進路が変わる。
 東釧路、遠矢と停車すると、通学の高校生が次々と乗ってきて、通路までいっぱいになった。
 一面に枯草の茂る釧路湿原を左に見ながら北へ北へと列車は走っていく。丹頂が見えないかと少し期待していたが見えず、警笛が鳴るとエゾシカが線路沿いにちらほら見えた。
 はじめのうちは、釧路湿原を見ながら高校へ通学できるとは羨ましいと思ったが、さすがにずっとこの景色では飽きる。
 騒がしかった車内も静かになって、みんな居眠りしている。私の隣で参考書を開いていた女子高生もウトウトしている。
 ここまで線路脇には白樺なのか林があったのだが、徐々に視界が開けて塘路に着くと釧路行きの列車と行き違う。
 塘路の次は茅沼で、タンチョウが来る駅と表示があるが、一羽も見えなかった。
 釧路湿原が尽きると町の雰囲気となり、6時56分に標茶に着いた。

標茶駅
標茶駅

 全員下車して車内は私一人になり静寂に包まれる。なぜこんなに早い時間に高校に通っているのか、次の列車は3時間後だからだろうか。
 釧路行きのホームにも高校生が大勢立っている。数分すると釧路行きの列車がやってきた。
 かつて標茶から空港のある中標津をへて国後島を望む海沿いの根室標津まで、標津線が走っていたが1989年に廃線になっている。
 標茶を7時に発車すると、車内は私一人で貸し切りだ。再び草原や牧草地を見ながら走っていく。
 25分ほど走ると摩周で阿寒の山並みが見える。国道を西へ行けば阿寒湖だが、40km近くも離れている。
 ここから川湯温泉へかけて、東に摩周湖、西に屈斜路湖があり、地図を見る限りでは観光地っぽいのだが、列車は白樺林の中を走るので何も見えない。
 私は摩周湖へ行ってみたかったのだが、路線バスは10月までとなっており、また次の機会の楽しみにする。カムイヌプリという山にも登ってみたいがヒグマが心配だ。
 川湯温泉からは森の中に入り、エンジンを唸らせながら登っていく。
 峠のトンネルを抜けると下りとなり、緑をすぎると徐々に開けて田園風景が広がってきた。
 右窓には標高1547m、知床半島基部の火山である斜里岳が見えている。オホーツク富士、斜里富士とも呼ばれる美しい山で、日本百名山にも選定されている。

斜里岳
斜里岳の車窓

 30分ほど畑や牧草地を見ながら走ると、8時31分に知床斜里に着いた。ここまではガラ空きだったが、座席の1/3ほど埋まった。
 斜里は知床への玄関口である。いつか知床も行ってみたいが、生きているうちに行けるだろうか。
 斜里から網走まではオホーツク海沿いを走っていくので楽しみだ。が、線路と海との間にちょっとした森があり、思っていたほど海は見えなかった。
 この後、網走の天都山へ行くつもりだったが、曇っていて展望が悪そうなので、オホーツクに最も近い駅と言われる北浜で下車することにした。
 9時02分北浜着。今日は網走13時26分発の「オホーツク6号」に乗れればよいので時間がある。
 まずは隣駅の藻琴まで、オホーツク海を見ながら歩いていくことにした。
(つづく)

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