ローカル鉄道の時間旅行
杉森涼
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母恋富士と白鳥大橋


 2015年10月。
 室蘭は札幌から南西へ直線距離で約90km、巨大な靴の形をした絵鞆半島に位置する。
 鉄の町と呼ばれる工業都市であるが、そのイメージは内海の港で、外海は断崖が連なる風景のよいところだ。
 4日目は、母恋富士や地球岬などの景勝地を散策、白鳥大橋を見てから札幌へ向かう。

 ホテルを出ると、昨晩の雨で水溜まりができている。今はまだ曇っているが、予報では天気は回復するようだ。
 東室蘭7時17分発の列車に乗り、3つ目の母恋へ向かう。普通列車だが特急型の車両で、せっかくなのでUシートと指定席に無料で座り、ちょっとだけリッチな気分を味わう。
 10分ほどで母恋に着き、歩いて標高156mの母恋富士に登ることにしている。ここには「母恋めし」という駅弁があるが、まだ売店が開いていないので買えない。

母恋駅
母恋駅

 母恋(ボコイ)とはアイヌ語でホッキ貝がたくさんある場所の意味だが、5月の母の日には記念入場券がたくさん売れるという。
 母恋駅を出て、しばらく地球岬への道路を歩いていき、途中で左の坂道に入っていく。とくに表示があるわけではないので地図が頼りである。
 少し迷いながらも登山口らしき場所に着くと、「港の見える森 40m」「元気もり森 500m」などの表示がある。元気もり森ってなんだ?と思いながら、まずは港の見える森を目指す。
 10分足らずの登りで標高104mの港の見える森に着くと、眼下には工場群と室蘭港、その奥には白鳥大橋、左にはアンテナの林立する測量山が見える。どんよりしていたが、雲の隙間に青空が覗いてきた。
 港の見える森から見晴らしのよい道を登っていくと、10分ほどであっけなく標高156mの母恋富士の山頂に着いた。
 この辺りで最も高い場所なので、港と反対側の地球岬方面も見えて清々しい。紅葉がまだ残っていて、なかなかよい景色である。

母恋富士からの眺め
母恋富士からの眺め

 母恋冨士からは熊笹に覆われた道を20分ほど、元気もり森、学びの森へと歩くと、トッカリショ入口という所で車道に出た。
 トッカリショは室蘭八景の一つである外海の荒々しい絶壁で、行けるところまで近づいてみると断崖絶壁で足がすくむ。
 この辺りから来た道を振り返ると、母恋富士は独立した峰ではなく尾根が部分的に三角形なだけなのだが、富士山のような形に見えた。
 しばらく外海の断崖を見ながら車道を下っていき、母恋駅からの道に合流するところが金屏風である。
 こちらも室蘭八景の一つで、朝日が当たると赤褐色の断崖が金屏風を立て連ねたようであることが名前の由来だという。
 金屏風からはそのまま直進して、緩やかな上り坂を10分ほど歩くと、巨大な靴の形をした絵鞆半島のかかとに位置して太平洋に面した地球岬に着いた。
 地球岬は昭和60年に「北海道の自然100選」で1位になった景勝地で、高さ100mほどの断崖絶壁が連なっている。展望台に上がると足元に灯台が見える。渡島駒ヶ岳や恵山岬、条件がよければ青森の下北半島も見えるという。
 徐々に晴れてきたが、雲が多く遠望は利かないので残念だ。幸福の鐘を鳴らして、しばらく休憩する。下の広場には地球儀の形をした電話ボックスがある。

母恋富士からの眺め
母恋富士からの眺め

 次は絵鞆半島の西側、白鳥大橋の南にそびえる標高140mの鍋島山へ登ろうと思う。
 鍋島山からはループになっているランプを含めた白鳥大橋の全景が見えると言う。ランプとは高低差のある場所を連結する道路の形態である。
 母恋駅まで戻って絵鞆岬方面へのバスを乗り、港南町というバス停で下車すると、平べったい山が見えるが、これが鍋島山らしい。
 地図を見ながらそれらしい方向へ坂道を上っていく。住宅地が尽きると舗装路から土の道に変わったが、車が通れる広い道で軽いハイキングにはちょうどよい。
 バス停から20分ほど歩いて山頂に着くと、何かの設備の建物があるが、測量山や噴火湾が見渡せて気持ちのよいところだ。
 山頂からは肝心の白鳥大橋は見えなかったが、灌木の踏跡を5分ほど北へ下っていくと姿を現した。
 室蘭港をまたぐ白鳥大橋は、1998年に完成した東日本最大の吊橋で全長1380m、白鳥が羽を広げたように見えることから名付けられた。羊蹄山は雲の中だが、昨日登った有珠山が見える。
 白鳥大橋の通行料は無料だそうだが、車はほとんど通行していないようであった。

鍋島山から見た白鳥大橋
鍋島山から見た白鳥大橋

 まだ時間があるので、さらに西の祝津まで歩くことにする。上記の靴で言えばつま先の部分である。
 港沿いの集落を歩き、祝津郵便局から坂道を上っていくと白鳥大橋や大黒島を見渡せる展望台だ。白鳥大橋という名前の通りに白鳥が羽を広げたようで美しい。
 しばらく景色を眺めて室蘭駅にバスで戻り、列車に乗り換えて札幌へ向かう。
 東室蘭から14時36分発のスーパー北斗に乗ると、16時すぎに札幌に着いた。
 今日は北海道大学の北側にあるのワンルームマンションを改装したホテルに泊まる。
 部屋には洗濯機と乾燥機があるので便利だ。洗濯した衣類を乾燥機に放り込んでから夕食へ出かけた。
 (つづく)

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