ローカル鉄道の時間旅行
杉森涼
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札沼線は爆弾低気圧が接近中


 秋の乗り放題パスを2回分、計6日で東京から釧路へ、さらに道東の釧路湿原や別寒辺牛湿原などを散策して、昨日滝川を経て旭川までやってきた。
 今日からは旭川周辺の美瑛や夕張を散策して、3日後に東京へ帰ることにしている。今日は近く廃止される札沼線の沿線を散策しようと思うが、台風並みの爆弾低気圧が来ているので、どうなるだろうか。

滝川から新十津川へ

 2017年10月23日
 旭川6時28分発、手稲行きの普通電車に乗って、滝川へ向かう。この電車は9時前に札幌に着くのだが、車内は空いていて通勤客はほとんどいない。転換クロスシートで快適だ。
 やがて深川などから大勢の高校生が乗り込んで満員になると、7時10分に滝川に着いた。ホームは高校生の行列で跨線橋を渡って改札口へ行くのにも時間がかかった。

旭川駅・手稲行きの普通電車
旭川駅

 滝川から新十津川へはバス便もあるが、1時間後なので地図を見ながら歩く。新十津川駅へは国道を2kmほどなので近い。
 新十津川は滝川から見て西に位置するが、滝川駅には東口しかなく、北側にあるアンダーパスで線路をくぐるしかないようで、遠回りをさせられる。
 小雨が降る中を1kmほど歩き、日本三大河川の第3位である石狩川を渡ると新十津川町に入った。

石狩川
石狩川

 新十津川町に入るとすぐ、金滴酒造という古そうな建物が目を引いた。創業明治39年、100年以上の歴史を誇る酒蔵らしい。今日は寒いので一杯飲みたくなる。

新十津川の金滴酒造
金滴酒造

 さらに600mほど歩いて石狩川の支流である徳富川を渡ると新十津川町の中心街で、8時すぎに新十津川駅に着いた。滝川駅からゆっくり歩いてきたが、50分ほどであった。

札沼線・新十津川駅
新十津川駅

 1日1本しか列車が来ないので、新十津川駅は辺鄙なところにあると思っていたが、すぐ近くに6階建ての大きな病院があり、住宅地なのでイメージがだいぶ違った。
 小さな一軒家のような駅舎内には、写真や想い出の品々が展示されている。並んでいる8つのベンチにはそれぞれ座布団が置かれている。札幌からこの終着駅まで乗ってくれば、また違った思いになるのかも知れない。

新十津川の駅舎内
新十津川駅

新十津川から鶴沼へ

 この後は、新十津川町役場を8時26分に出るバスで浦臼方面へ行き、鶴沼発9時06分の下り列車に乗って、新十津川までの車窓を楽しもうと思っている。
 何号線だったか忘れたが、最寄りのバス停から歩いて、鶴沼駅に8時55分に着くと雨が雪に変わり、本降りになってきた。辺りは刈り取りが終わった田んぼが寒々と広がっている。

札沼線・鶴沼駅
鶴沼駅

 板張りのホームが薄っすらと白くなると、ヘッドライトを光らせた列車がやってきた。キハ40の前面には雪がこびり付いている。1日1往復しかない風前の灯火のような列車である。

鶴沼駅・新十津川行きの列車
新十津川行き

 まだ、廃線が決まっている訳ではないので、10人ほどが乗っている。雪が舞う田んぼの中を走って9時28分、新十津川に到着。
 駅には何人かこの列車を待っている人たちがいて、僅かな時間だがホームが賑やかになった。

新十津川に着いた1日1本の列車
新十津川

 まだ9時半なので、折り返しの石狩当別行きの最終列車に乗って、於札内から新十津川まで歩いて戻ってくることにしよう。
 5人ほどの乗客を乗せて、新十津川を9時40分に発車、再び雪が降る田園風景を眺めながら、於札内に9時53分に着いた。こんなところで降りるのは、もちろん私一人だ。

札沼線・於札内駅に着いた列車
於札内

 於札内(おさつない)とは「お札ない」、小銭しかないような貧そな駅だ。元は駅ではなく仮乗降場だったのだろう。板張りのホームだけの駅は、宗谷本線や留萌本線などでいくつも見たことがある。
 雪に消える列車を見送り、田んぼの中を下徳富、新十津川方面へ歩き出した。

於札内駅でキハ40を見送る
於札内

 が、あまりの強風でなかなか進めない。民家や防風林のようなものはなく、吹きっさらしなので傘が役に立たない。雪ならよかったのだが、みぞれに変わってズブ濡れになった。
 さっき、新十津川駅にいたとき、完全防水のような格好をしている人がいたが、こういうことなんだなと今になって分かった。北海道を甘く見ていた報いかも知れない。
 ここまま進めば、低体温症になりかねないので、於札内駅に戻って待合室に避難した。ホーム上の簡易的な待合室だから、もちろん暖房などはない。気温は3℃くらいだろう。ズブ濡れになって余りにも寒いので、何とかしなければならない。

於札内の駅舎内
於札内の駅舎内

 私は学生時代に野球をやっていたので、さんざん筋トレをしてきたので、スクワットをして熱を産出することにした。体が温まったら休憩、また寒くなったらスクワットを繰り返した。
 ふと窓を見ると、数匹のトンボがサッシに停まった状態で死んで、即身仏のようになっている。


トンボ

 みぞれは冷たい雨に変わり、相変わらず降りしきっている。列車は明日までない。浦臼13時15分発の滝川行きのバスの時間まで、待つしかないなと思っていたが、寒さに耐えられなくなってきた。
 その前に浦臼行きのバスがある。バス停までは歩いて10分ほどかかるが、またズブ濡れになってでもこのバスに乗りたくなった。バスには間違いなく暖房が入っている。
 何とかバス停にたどり着いてバスに乗ると、運転手さんがびっくりしたような顔をしている。
 浦臼駅に12時55分頃に着くと、駅舎は「ふれあいステーション」という名の立派な建物であった。

札沼線・浦臼駅
浦臼駅

 浦臼の駅舎に入ると大きなファンヒーターがあり、そこでずっと暖房に当たった。服もだいぶ乾いて生き返った。
 新十津川まで行く列車は1日1本しかないが、浦臼から札幌方面へは6往復あり、ホームには13時21分発の列車が出発を待っていた。

浦臼駅・石狩当別行きの列車
石狩当別行きの列車

 私は13時15分発の滝川行きのバスに乗った。滝川に着く頃には雨は上がり、いったい何だったんだと思った。北海道の天候に振り回された一日をなった。

 (つづく)


 秋の乗り放題パスの旅
 【1日目】東京から青森へ
 【2日目】青森から苫小牧へ
 【3日目】苫小牧から釧路へ
 【4日目】塘路駅からサルボ展望台へ
 【4日目】細岡駅から釧路湿原へ
 【5日目】糸魚沢から厚岸へ、別寒辺牛湿原を歩く
 【6日目】根室本線の鈍行で釧路から新得・滝川へ
 【7日目】札沼線は爆弾低気圧が接近中
 【8日目】雪の美瑛をレンタサイクルで散策
 【8日目】富良野から星の降る里・芦別、夕張へ
 【9日目】三菱石炭鉱業大夕張線跡を辿る
 【10日目】苫小牧から深夜のフェリーで八戸へ